社長のカジダンへの道 子育てで時間は失わない
ノバルティスファーマ社長 綱場一成氏
私は両親から愛情をたっぷり注がれて育った。今の時代なら問題になるだろうが、上級生にいじめられた小学生の私のために、昔気質の親父が相手の家に怒鳴り込んだこともあった。そういった親の姿が今も脳裏に焼き付いているため、子供たちには両親からもらった以上の愛情を注ぎたいと思う。
親がしないことは、子供もしない。子供たちにやってほしいと思うことは全て、私もするようにしている。図書館に行くと、子供の絵本とあわせて自分の本も借りる。子供と一緒に「公文式」の教室に行き、隣で仕事に関連する本を読む。親が一緒に勉強してくれることで子供はますます頑張り、私は知識を習得できる。
最近、長男は格闘技を習い始めた。私も彼と一緒に習っている。子供とともに研さんすることで、子育てはますます楽しくなる。
業務がたまっていて、週末に子供をサッカーに連れていく時間がもったいない。家事をする時間があるならビジネス本を読みたい――。「仕事に全力投球していないんじゃないか」といった罪悪感は、忙しいビジネスマンなら誰にでもあると思う。
子育てと仕事を分けすぎず、「マルチタスキング」でいいという発想は、海外駐在時代の同僚や上司から学んだ。子供のサッカーのレッスンを観戦する間にたまった新聞を読む、家事をしながらポッドキャストでニュースを聞くといった風にマルチタスキングを自分で認めたら、気持ちが楽になった。
1日は全員に公平に24時間与えられているというのは幻想だ。使い方によって26時間にも27時間にもなる。外資系企業ではオンライン会議中に子供の声が入ることもある。私も次男を膝の上で寝かしつけながら、海外と電話会議することがある。
子供が生まれてから、一日の使い方が圧倒的にうまくなったと感じる。長時間ダラダラと働くことがなくなり、短い時間で集中するので生産性が高まった。特に子供が目覚める前の朝の時間は貴重だ。妻か私のどちらかが、子供が起きる前に食洗機を回し、洗濯も済ませる。ジムで汗を流すのも、新聞に目を通すのもこの時間だ。
仕事柄夜の付き合いも多いが、子供が寝る時間までに帰宅し、寝かしつけをする。子供の寝顔しか見られない父親にはなりたくないからだ。夜遅くまでお酒に付き合わなくなったのはよいことだ。
共働きの私たちは、夫婦お互いのスケジュールの把握が必要だ。世の中便利になったもので、予定は「グーグルカレンダー」で共有し、夜に会食が入った場合は妻も把握できるようにしている。
12月半ばから私の2か月の育休は始まった。妻の出産を今週に控え、家族にもうひとり加わることの重責を感じている。おむつ替えや抱っこひもなど、これが最後になるかと思うと早くも切ないが、この2か月は十分に満喫したいと思う。三男が無事に生まれ、妻も健康であることを心から願う。
東大経済卒。米デューク大MBA取得。総合商社を経て米イーライ・リリーで日本法人糖尿病領域事業本部長や香港、オーストラリア、ニュージーランド法人社長を歴任。2017年4月から現職。48歳。
[日本経済新聞夕刊2019年12月24日付]
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