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その結婚、「合理的」ですか? 画像はイメージ=PIXTA

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人間が「非合理的」に動く原理を解明しようとする、行動経済学の裾野が広がってきた。食事、買い物、医療、結婚といった日常生活の身近な問題を、行動経済学のレンズを通して見る著作が読者をひき付けている。

行動経済学の歴史はそれほど長くはない。2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏は『行動経済学の逆襲(上・下)』(遠藤真美訳、ハヤカワ文庫、19年10月)で、行動経済学が初めて大規模な公開討論会の議題になったのは1985年の学術会議だと振り返っている。セイラー氏らの奮闘もあり、行動経済学はその後、米国を中心に急速に浸透した。

同書を出版した早川書房は2000年代後半から行動経済学者による著作の邦訳を手掛けている。ダン・アリエリー氏の『予想どおりに不合理』(熊谷淳子訳、13年8月)と『不合理だからうまくいく』(櫻井祐子訳、14年3月)、ノーベル経済学者のダニエル・カーネマン氏の『ファスト&スロー(上・下)』(村井章子訳、14年6月)は、単行本の発行から2~3年ほどで文庫本となったヒット作だ。同社が出版したアリエリー、カーネマン、セイラー各氏の著作を合計した発行部数は累計で60万部を超えている。

日本人の著作も増えてきた。山根承子ほか著『今日から使える行動経済学』(ナツメ社、19年4月)は、マンガや図を交えて行動経済学の基本と研究成果を紹介する入門書で、行動経済学に初めて触れる人でも容易に理解できるように書いたという。現在の状態を高く評価し、状況の変化を好まない「現状維持バイアス」、利得よりも損失のほうを重く感じる「損失回避」といった概念を実例とともに学べる。大竹文雄著『行動経済学の使い方』(岩波新書、19年9月)は、大阪大学での講義内容を基にした著作で、行動経済学の「基礎力と応用力が身につく」とうたう。

「行動経済学がいちばん影響を与えていないのが、マクロ経済学」とセイラー氏が認めるように、行動経済学には弱点もあり、経済学界では「理論を構築できていない」との厳しい評価も根強い。それでも一般読者の心をつかみ、応用範囲を広げている行動経済学は、既存の経済学に変革を迫り続けている。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞2019年12月21日付]

行動経済学の逆襲 上 (ハヤカワ文庫NF)

著者 : リチャード・セイラ―, Richard H. Thaler
出版 : 早川書房
価格 : 924円 (税込み)

不合理だからうまくいく: 行動経済学で「人を動かす」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

著者 : ダン・アリエリー
出版 : 早川書房
価格 : 968円 (税込み)

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