乾燥する冬はドライアイに注意 涙の成分変化で視力低下も
目の表面が乾くことで様々な不快症状が表れるドライアイ。パソコン、エアコンの普及で患者が増えている現代病だ。空気が乾燥しがちな冬場は一段の用心が必要。発症のしくみを知り、備えを入念にしたい。
目が疲れやすい、しょぼしょぼする、ゴロゴロする、かすむ、痛い――。ドライアイは涙の量が減ったり質が低下したりする状態のことで、目の乾燥感のほか、様々な不快症状を引き起こす。
涙には2種類ある。泣いたときに出る「反射性分泌の涙」と目の表面を常に覆い保護する「基礎分泌の涙」で、後者がドライアイに関係する。
基礎分泌の涙は油、水、ムチン(糖タンパク質の一種)の3層から成る。水の蒸発を防ぐ油、目を潤し角膜に栄養を供給したり異物を洗浄したりする水、水を目の表面に均一に広げて定着させるムチンと、それぞれ大切な役割を担う。基礎分泌の涙が減ったり3成分のバランスが崩れ涙の層が不安定になったりすると目の表面が乾いて傷ついたりし不快な症状につながる。
涙の量や質が変化する原因の一つは加齢だ。年齢を重ねると涙の分泌量が減る。慶応大学医学部眼科学教室特任准教授の小川葉子氏によれば「涙の量は十分だが油やムチンの成分が少なくなるケースもある」という。
もう一つの原因は生活習慣の変化だ。例えばパソコンやスマートフォンの長時間使用。画面を凝視し続けると、まばたきの回数が減り乾燥しやすくなる。
小川氏は「パソコン画面を目の高さより下に置いて見下ろす」ことをすすめる。見上げるとき、目は大きく見開かれるので涙が蒸発しやすくなるためだ。意識的にまばたきすることも有効だ。
コンタクトレンズの使用もドライアイを招きやすい。涙がレンズに吸い取られ、蒸発しやすくなる。レンズの汚れがムチンの分泌を低下させることもある。「1日の装着時間を2~3時間減らすことを心がけて」(小川氏)
外気が乾燥しているうえ、エアコンの使用で室内がさらに乾燥する冬はドライアイになる例が増える。エアコンの風が目に直接当たらないようにし加湿器を併用するといった工夫をしたい。
デジタル機器やエアコンの普及で患者が増えドライアイには現代病の側面がある。
2016年にはドライアイの診断基準が改定された。従来は目の傷の有無が基準とされたが、自覚症状と涙の蒸発の速さでドライアイと診断されるようになった。吉野眼科クリニック(東京・台東)院長の吉野健一氏は「目に傷がなくても、ドライアイによる目の不快症状を訴える患者が近年増えている」と話す。
生活習慣の改善でも症状が治まらない場合は、眼科で点眼薬を処方してもらおう。かつては水分を補給し傷ついた角膜を修復する点眼薬のみだったが、最近は涙の各成分に直接働きかける点眼薬が開発されている。
「点眼薬は必ず防腐剤の入っていないものを」と吉野氏は注意する。涙が少ない人が防腐剤入りを使うと、防腐剤が目の表面にとどまり角膜障害を起こしかねない。
点眼療法だけで回復しなければ「外来で簡単に処置できる『涙点プラグ』を選択肢に」と吉野氏。目頭の近くにあり、涙の排出口となる涙点に栓(シリコーン製プラグ)をして涙の排出を抑え、目の表面にとどまるようにする。
小川氏は「ドライアイ用の保湿メガネをかけるのもおすすめ」と話す。フレーム側面に保湿タンクが付いているメガネが市販されている。
ドライアイは放置すると視力の低下につながることも。目の乾きや不調を感じたら、早めに対策を講じよう。
(ライター 松田亜希子)
[NIKKEIプラス1 2019年12月21日付]
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