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シャープの山口直樹さん

シャープの山口直樹さん

シャープの自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」が売れている。2018年度の販売台数は6万台で、発売した15年度から倍増した。立役者は18年に着任したスモールアプライアンス事業部・販売推進部の山口直樹部長(54)。ホットクックを新たな生活必需品に育てようと奮闘している。

山口部長は入社以来、営業一筋に歩んできた。家電量販店に日々足を運び、冷蔵庫などの白物家電やエアコンなどを幅広く売り込んできた。

関西で生まれ育ち、仕事の振り出しも同社の工場がある奈良県だった。「シャープブランドに囲まれて育ってきた。他社の製品を買おうと思ったためしがない」と笑う、根っからのシャープファンだ。

現在の使命は自動調理鍋のホットクックを一過性のブームでなく「暮らしに深く根ざした生活必需品に育てる」ことだ。健康志向が定着するなか、新しい調理家電は売り場でいい場所さえ確保できれば一定の販売が見込める。飲み物の「スムージー」が流行すればミキサーが売れ、油を使わずに揚げ物ができる調理器もヒットした。ただ一時的なブームで終わる商品も多い。

年間販売台数が200万台の市場に育った空気清浄機。一翼を担うのがシャープの「プラズマクラスター」だ。それまで空気清浄機はリビングにあるものだったが、部屋ごとに置く必需品に変わった。ホットクックも同様に「一度売って終わりではなく、長く使って壊れたら、また買い替えてもらえる存在にしたい」と話す。

バイヤーをファンに

では、どう売り込むか。調理家電の魅力を効果的に伝えられるのは、何と言っても、客の前で実演する試食体験だ。だが主力の販路である家電量販店の売り場では、衛生管理上、原則として試食は禁止されている。

そこで山口部長が目を付けたのが、量販店のバイヤーを商品のファンにすること。着任するや、「ヘルシオセールスプロモーション」と銘打ち、全国の家電展示会を回ってはホットクックを使った料理をバイヤーに食べさせた。

通常の鍋を使った煮込み料理は、火加減をみながらかき混ぜる必要がある。ホットクックには自動のかき混ぜ機能があり、「ほっとく」だけで料理ができる。「この中にお母さん、潜んでますねん」。持ち前のユーモアも交えながらアピールし、バイヤーらに強く印象づけていった。

店頭でのPRは「おいしい匂い」で客を引き付けた。肉じゃがやカレーなどを店頭で調理し、香りで利用シーンを連想させた。購入に前向きな消費者向けには、東京や大阪で「ヘルシオ体験教室」を開催。購入した消費者向けにも「ヘルシオ使い方教室」を開いて、情報発信を続けた。

一連の取り組みは、同社の商品企画部を巻き込んで展開した。食体験の場を広げることが購入のきっかけにつながり、ホットクックの18年度の販売台数は17年度比1.5倍、発売当初からは倍増した。

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