代替肉を食べてみた 植物由来の牛・豚・鶏どんな味?
大豆など植物由来の原料で造られた「代替肉」が牛、豚、鶏に続く「第4の肉」ともいわれ、注目を集めている。動物の肉そっくりの食感が売り物というが、どこまで本物に迫っているのか。
代替肉が注目を集めたのはこの数年。植物由来で、コレステロールの代わりに食物繊維を含む健康食材である一方、動物肉と同様、豊富なたんぱく源にもなるためだ。海外の代替肉はエンドウ豆を使うケースも多いが、日本は大豆を使った製品が主流だ。
国内では従来、外食産業など業務用にハンバーグやソーセージなど加工食品の形で普及していた。最近は一般消費者向けにも、食感や風味を改善した商品が相次ぎ登場してきている。イトーヨーカドー横浜別所店(横浜市)は10月、精肉売り場に代替肉コーナーを設けた。
さっそく代替肉と動物肉で同じ料理を作り、食べ比べてみることに。調理は東京・目白のアジア風家庭料理店「ビストロAmi」に依頼した。
森永製菓の孫会社SEE THE SUN(神奈川県葉山町)の「ゼンミート」(原料は大豆と玄米)、マルコメの「大豆のお肉」(大豆)、ベンチャー企業のグリーンカルチャー(東京・葛飾)の「グリーンズミート」(大豆や植物油脂など)の3種類。湯戻しが必要な乾燥タイプとレトルトタイプをそろえた。
代替肉自体は基本無味で、メーカーの多くは味付けの濃い料理を推奨する。そこで唐揚げなど、家庭でもできる比較的味の濃い5品を選んだ。
オーナーシェフの奥山朱美さんは代替肉を使うのは初めてだという。記者は事前に材料を教わらず試食してみた。
1品目は唐揚げ。大豆のお肉のレトルトと乾燥、ゼンミートの乾燥タイプを鶏肉と比べた。代替肉は筋繊維をかみ切るような感触やコリコリとした食感に惑わされた。ほのかな甘さを感じるものもあった。奥山さんによると「鶏肉より揚がるのが早い。味もあっさりしている」という。
2品目のキムチ風味の野菜炒めは、代替肉2種と豚バラ肉を比較した。食感は一方の代替肉はふかふかして心なしか油揚げのよう。「代替肉の方が味が染み込みやすく、濃くなりやすい」(奥山さん)
3品目のマーボー豆腐は代替肉2種と豚ひき肉の比較。肉が小さくサンショウが効いているため、味、食感ともに、第一印象で豚肉との区別はほとんどつかなかった。
4品目の肉団子の甘酢あんかけは、味付けしてある冷凍グリーンズミートと豚ひき肉の比較。豚肉のまだらな食感に対し、代替肉はペーストを固めたような均質な食感で、味付けもより強く感じた。
総じて、比較を意識すれば違いは分かるが、奥山さんは「単体だと区別がつかないケースも多いのでは」とみる。
ただ最後に牛肉と比較した肉野菜炒めでは違いが歴然。代替肉の歯応えは明らかに軽い。「うまみも薄く鶏や豚に近い。野菜を複雑な味にする肉汁も出ない」(奥山さん)
記者が食べた代替肉に共通するのは、長くかむとガムのように味が薄くなり、繊維質の食感が目立つこと。豆の香りも残っており、気になる人はいるかもしれない。
価格はどうか。11月下旬のある日、スーパーの唐揚げ用若鶏と、ネット通販のマルコメの乾燥代替肉を1グラム当たりで比べると、若鶏1.38円に対し代替肉1.37円と大差はなかった。メーカーや日によっては本物を上回ることもあるようだ。環境保護への貢献や健康志向を満たす対価か。
鶏や豚はともかく牛の代替は難しそうだが、別物と割り切れば普通においしい。健康診断でコレステロール値が高かったこともあり、週1回は食べてもいいと思った。
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飲食店や総菜店にも広がり
大塚食品が推計する2018年の代替肉市場規模は170億円。22年には1.5倍の254億円と予想されている。当初はベジタリアン(菜食主義者)向けが多かったが、最近は健康や美容を気にする若い女性や、メタボを気にする中年男性らをターゲットに据える。代替肉の料理を提供する飲食店も増えている。
食用油大手の不二製油グループ本社は9月、大丸心斎橋店(大阪市)に大豆ミートが主力の総菜店「アップグレードプラントベースドキッチン」を開業した。大豆由来食品の専門店で、大豆ミートを使ったラザニア(税別400円)が人気だ。
(堀聡)
[NIKKEIプラス1 2019年12月7日付]
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