Men's Fashion

ザ・ノース・フェイス ラボ ウエアを好みにカスタム

Hot Zone

2019.12.12

ゴールドウインが11月に開いた「ザ・ノース・フェイス ラボ」は、来店客の体形に合わせて1カ月でジャケットを作る同社初のサービスが特徴だ。店舗の専門スタッフと相談しながら腕や背中など部位ごとに細かく調整できるほか、素材やファスナーの色も選べる。高機能ジャケットは用途によって最適な形状が異なるため、新サービスで顧客層の拡大を狙う。




ダウンなど人気の3商品、3D採寸で細かく調整

「今日は見に来ただけだけど、休日に納得できる1着を作りにまた来たい」。ノースフェイスのファンという30代の男性会社員は仕事終わりに来店。ジャケットを手に取ったり、カスタマイズできる生地のパターンを確認したりしていた。店内は平日にもかかわらず、社会人から外国人まで多くの客であふれる。

新店は改装開業した「渋谷パルコ」の2階に入る。約100平方メートルという売り場面積はゴールドウインの店舗としてはさほど大きくはないが、本格的な登山にも対応できる「サミットシリーズ」やファッション性の高い「パープルレーベル」など幅広い商品を取りそろえる。

最大の特徴は、店舗のレジ横にある小さなスペースだ。最新の3Dスキャンシステムと作図ソフトが入ったパソコンが置いてあり、来店客はここで用途や好み、体形に合った自分だけのジャケットを作ることができる。

まず自宅などでスマートフォンやパソコンを使い、ベースとなるジャケットをフリースとダウン、マウンテンパーカの3種類から選択。次に10~20種類ある肩や腕部分の色や、袖口やファスナー、ロゴなどの細部を選択していく。

自分好みのカスタマイズが終われば、そのままネットで来店予約をし、店内で体を3Dスキャンシステムで計測する。数十秒の計測後、専門の店員と面談。「通勤用途なら、中にスーツを着ることを考えて少し大きめにしましょう」など、パソコンを見ながら要望や体形に応じて微調整をしていく。

職人が一つひとつ丁寧に作製

すべてが決まると、富山県の生産拠点で職人が一つひとつ丁寧に作り上げる仕組みだ。

店舗ではシューズやボトムスも取り扱っているため、作製したジャケットや利用シーンに合わせたトータルコーデの提案もできる。

都会と山頂ではインナーの厚さが異なり、ジャケットの最適なサイズが変わるが、既製品の場合は着るシーンに応じた調整が限られてしまう。同店の新サービスはこうした課題を解消し、ほぼ全ての消費者のニーズに応えられるようになったという。

ゴールドウインは従来は小売店への卸売りが中心だったが、近年は直営店による販売の比率を高めつつある。卸売りに比べて利益率が高いだけでなく、顧客の声を直接聞くことができるのが利点という。新店にも客のニーズに向き合うことで、さらなるファンを獲得したいとの思いがにじんでいる。

(佐伯太朗)

[日経MJ 2019年12月4日付]

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