相続空き家 片づけで心に区切り、仲間と一緒も支えに

NIKKEIプラス1

そんなとき旧知の寺の住職から「お試し移住やシェアオフィスの拠点を探している人がいる」と島に移り住んだ集落支援員の栄大吾さん(30)を紹介された。「地元の役に立つなら貸そう。片付けのきっかけにもなる」と決断。3度ほど帰郷して必要な物をえり分け、残りは委ねた。

11月上旬に栄さんを訪ねた。既に仲間と3トン車で10往復以上していたが、屋内に荷物はまだ山積み。それでも一緒に半日片付けると視界が開け、先も見えてきた。「人が集える場」に変わりつつある。

ひとりや家族だけではなく、仲間を募るワークショップ形式の片付けも(兵庫県丹波市)

仲間を募るワークショップ形式で古い家を片付け、再生する試みもある。兵庫県丹波市では蔵が3つ並ぶ庄屋だった旧家をゲストハウスにする企画が進行中だ。パン店経営の三沢孝夫さん(58)やジェラート店主、家具職人など様々な人が手弁当で集まり、片付け自体を「イベント」化していた。実際わいわいやりながらの作業は楽しかった。

東京から片付けに通う会社員の湯佐安紀子さん(29)は田舎暮らしや古民家に興味があり、移住した同級生の縁で、この試みを知った。「私も実家は大阪。片付けを体験して、今のうちに物は減らそうと親と話し、実践している」

それでなくても片付けは労力、時間、お金がかかる。周囲の助けは心の支えになる。

◇  ◇  ◇

空き家、7戸に1戸

総務省の調べでは全国の空き家は849万戸。住宅全体の7戸に1戸に当たる。2015年施行の空き家対策特別措置法で、危険な空き家に指定されると、固定資産税が増えたり、強制的に取り壊す代執行の対象になったりする可能性がある。国や自治体は「空き家バンク」で売却や賃貸を仲介するなど対策を講じるが「近所の手前、見知らぬ人に売ったり貸したりできない」との声は根強い。ただ決断を迫られる日はいつか来る。空き家の存在を早くから意識し、対処法を学んでおきたい。

(河野俊)

[NIKKEIプラス1 2019年11月23日付]

注目記事