相続空き家 片づけで心に区切り、仲間と一緒も支えに

NIKKEIプラス1

2019/11/23付
オーナー(手前)を中心に思い出の品をえり分ける(東京都内)=小林 裕幸撮影
オーナー(手前)を中心に思い出の品をえり分ける(東京都内)=小林 裕幸撮影

親が亡くなり空き家になった実家を何年もそのままにしている。思い当たる人もいるのではないか。放置する理由でよく挙がるのが片付けの大変さ。経験者の解決策を探った。

「ここまで5年かかった。やっと終わる安堵感。実家がなくなる寂しさは、これから来るんでしょうけど」。東京・多摩東部、戸建ての実家の片付けを終えた会社員の男性(27)は晴れやかだった。

最後の仕分けを手伝いながら話を聞いた。就職して実家を出てすぐ、母が入院中にひとり暮らしの祖母を亡くし、実家は空き家に。後に母も亡くなって相続した。千葉県内の自宅から換気に通うが、家の傷みが目立ち、ハクビシンがすみ着いたことも。税や光熱水費は年間数十万円。管理代行を頼んでいたNPO法人空家・空地管理センター(埼玉県所沢市)とも相談し、更地にして売ると決めた。

家財の量は想像以上だったという。片付けの日が、ごみ回収日とは限らず、車で持ち帰るのもしばしば。難関は仕分けだ。男性はスケッチブックを眺めつつ「ひとりで残すか捨てるか決め続けるのはつらくて」。記者も親のコレクションやアルバムを処分できるか。相談相手がいないと踏ん切りがつかないと思う。

実家には思い出の詰まった品が多い。業者に丸ごと処分してもらうという選択肢もあるが、家の売却や解体で期限が迫らないと、そもそも手を着ける気になりにくい。

空き家に関する著書もある住生活コンサルタントの大久保恭子さんは「まず自分が欲しい物を宝探し感覚で探す。余裕があれば親族や友人に引き取ってもらう。捨てる後ろめたさが和らぐ」と話す。

空き家の片付けを支援するモノコミュ研究所(兵庫県西宮市)の山藤美幸代表理事は「家の片付けは家族の節目。心の区切りになる」。自らも父の実家を片付けるのに3年かけたという。片付けの期間は気持ちを整理するために必要な時間なのかもしれない。

地方出身で実家が遠い場合も基本は同じ。ただ第三者を巻き込むことで負担が軽くなる場合もある。山口県周防大島町を訪ねた。元は雑貨店の旧家を持つ大谷和正さん(61)は進学で島を離れ、今は千葉県浦安市で暮らす。母を亡くし、実家は10年ほど空き家。「売る気はなく、仕事を辞めたら整理しようと考えていたが、なかなかできなくて」