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「ほんまもん」に大満足! 裏なんばの格安すし割烹

日経MJ

自ら板場に立つ中本社長。忘年会などの飲み会なら個室予約がオススメ
自ら板場に立つ中本社長。忘年会などの飲み会なら個室予約がオススメ

大阪出張で楽しみなのが活気のある小型店が密集する“裏なんば”エリアの散策だ。バル、立ち飲み、焼き肉――。業態を問わず値ごろ感のある店がしのぎを削っている。それだけに入れ替わりも激しく、情報収集は欠かせない。

このエリアで筆者が注目しているのが鮮魚立ち飲み居酒屋「ひでぞう」のオーナー、中本雄三社長が手がける店の数々だ。すでにグループは直営店が7店、のれん分けが6店あり、どの店舗も繁盛している。

なかでも目をひくのが、ビルを一棟借りして1階に「ビストロolympic」、2階に鮮魚居酒屋「ひでぞう」を入れた複合店。どちらも連日満席。その中本社長が2018年12月にオープンしたのが「鮨なかもと」だ。82平方メートルの店舗にカウンター22席、個室14席を配し、月商は約800万円を超え右肩上がり。一日平均3回転で、早い時間は予約で満席になる。

寿司(すし)屋だが常に30種類以上のつまみもそろえているので、寿司割烹(かっぽう)として使える。

コスパの良さに驚いた。刺し身の「造り盛りあわせ」は5種で980円(税別)、7種で1380円。ネタは仕入れによるが、取材時はクエや生マグロの中トロなど上ネタぞろい。1カンの厚みは十分。一切れを口に入れれば、それだけでほおが膨らむほどだ。

手前から「おまかせにぎり5カン」「日本酒(グラス)」「造り7種」。刺し身の厚みが圧巻

そして握りは「おまかせ5カン」が1200円だ。造りと同じくネタは大ぶりで、シャリには赤酢を使う“ほんまもん”が並ぶ。取材時は写真の生マグロ中トロ、アジ、クエ、ヤリイカ、赤貝だった。どれも魚種に合わせて包丁が入り、塩〆やあぶりなどの仕事が施される。正直、高級店と比べてもひけを取らない仕上がりに、つまんでは、ただ口福を感じ、うなるばかりだった。足りなければお好みの握りが1カン150~400円で注文できる。

酒は厳選した日本酒、ワインがそろう。お客の多くは白ワインを注文し、一日に10本近くボトルが空くという。筆者が狙うのはここの日本酒。「鍋島」「七本槍(やり)」「田酒」など酒好きの顔がほころぶ名酒ぞろい。それらがほとんどはグラスで680円なのだが、うれしいことに量は150ミリリットルもある。最近はグラスだと半合(90ミリリットル)で同価格ぐらいなので、お得感がある。

中本社長は鮮魚居酒屋などを営む一方で、大阪市東部中央卸売市場に店を構える仲卸「浪速鮮魚」も経営する。よく仲卸が飲食店を経営することはあるが、中本社長はその逆で飲食店が仲卸に参入した。

「とにかくおいしい魚を、手ごろな価格で楽しんでほしい。若い人にはとくにそう願う。それを実現するために、仲卸も手がけるようになった」と中本社長。そうした思いもあり、手ごろな価格で寿司が楽しめるようにと、鮨なかもとを開業し、毎日自ら板場に立っている。

魚の鮮度は抜群で、仕事も細やか。旬を取り入れた酒肴(さけさかな)の種類は迷うほどあり、酒の質と量に大満足。魚好きにとっては天国のような店だ。この店に限らず、中本社長が手がける店を後にするとき、「なぜ、都内進出しないのか」と、悔しい気持ちになる。中本社長に東京には進出しないのかと問うと、「当分、東京進出はありませんね」と素っ気ない。次の大阪出張を楽しみにするしかないようだ。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2019年11月22日付]

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