刺し身もいける、ビールがうまい 富士宮のニジマス

2019/11/21付
揚げたニジマス(中央と右)を使ったワンプレートランチ(JINQ)
揚げたニジマス(中央と右)を使ったワンプレートランチ(JINQ)

静岡県富士宮市といえばB級グルメの代表格「富士宮やきそば」が全国的に有名だが、国内最大級の養殖ニジマスの産地でもある。きれいな湧き水の中で育ったニジマスは地元では保存のきく甘露煮などにして食べるのが一般的だったが、最近は新たな調理法に取り組む店が増えている。

ニジマスを使ったフィッシュ&チップスが夜のメニューとして人気なのが、昨年開店したカフェ、JINQ(ジンク)。塩でマリネにして衣をつけて揚げたニジマスはサクサクの食感で、地ビールとの相性はばっちりだ。ランチプレートに揚げたニジマスを使用することもある。

店を運営する丹沢恭子さん(42)は「ニジマスは富士宮市の魚なのにあまり食べられていない。身近な食べ物にして提供したかった」と話す。JINQはニジマスのマリネのサンドイッチも提供するが、生ハムのような食感だ。

ニジマスの刺し身はタイやヒラメのように白く透き通る(花月)

「富士宮のニジマスは味が淡泊でクセがなく、どんな料理にもあう」と語るのは日本料理店、花月の岩見安博さん(68)。生きたニジマスを店の敷地内にあるいけすで育て、いつも新鮮なニジマスを調理している。同店の「にじます会席」は、刺し身、焼き魚、煮付け、フライなど様々なニジマス料理が楽しめる。

薄造りにした刺し身はタイやヒラメのように白く、食感も似ている。養殖ニジマスは寄生虫がおらず、刺し身にしても安心して食べられる。

割烹(かっぽう)旅館、小川荘の人気料理「にじます茶漬け」はご飯にニジマスの刺し身をのせてゴマ風味のだしをかけて食べる。ご飯の上に富士山を模したのりと金粉をのせる演出がユニークだ。

湧き水の水温は年間を通じてニジマス養殖に適している(柿島養鱒富士宮事業所)

これらの店のニジマスは、富士宮市北部にある国内最大級の養鱒場、柿島養鱒富士宮事業所で育てられている。近くの源泉から湧きでる豊富な水は「水温が年間を通じてセ氏10~12度程度に保たれ、ニジマスにとって最適の場所」(岩本いづみ社長)だ。大型のニジマスは2キログラム以上に育つが、同社は200~300グラムの小型ニジマスを「ホワイト富士山サーモン」として富士宮市の名物にしたい考え。

ニジマス料理を手軽に楽しみたい人には、富士山本宮浅間大社の近くの「お宮横丁」がおすすめ。ニジマスを使った「鱒(ます)バーガー」や「ます串」が食べられる。観光地を訪れた際、富士山の湧き水が育んだニジマスを楽しんでみてはいかがだろう。

<マメ知識>昭和初期に養鱒場
ニジマスは北米が原産地で明治時代に国内に持ち込まれた。静岡県はニジマス養殖を産業化するため1933年(昭和8年)、富士宮市に富士養鱒場を開設した。富士宮の湧き水は水温の変化に敏感なニジマスの養殖に適し、生産量は国内トップクラス。富士宮市は2009年にニジマスを市の魚に指定し、富士宮やきそば学会の成功にあやかり広報組織「富士宮にじます学会」を設けた。市観光協会の小川登志子会長は「ニジマス料理を通じて水がきれいな地域としてブランド力を高めたい」と話している。

(静岡支局長 原田洋)

[日本経済新聞夕刊2019年11月21日付]

五感を豊かにする旅紀行を読む