劇団四季が再開場・池袋に新施設 変わる東京劇場地図
東京都内で劇場の新設や再開場が相次いでいる。池袋地区が劇場街として浮上し、劇団四季も新劇場で意欲作に取り組む。五輪を機に塗り替わる新しい「劇場地図」をみてみよう。
今月1日、池袋駅の東口に8つの劇場を擁する「Hareza池袋」という複合文化施設が開業した。1300席の豊島区立芸術文化劇場をはじめ、多目的ホールなどから成る。
芸術文化劇場のこけら落としシリーズは郷土芸能などもあり多彩だが、中心はミュージカル。宝塚歌劇の「ロックオペラ モーツァルト」(12月3日から)が皮切りだ。
「行政の中心政策」
豊島区は東京芸術劇場前の西口公園を「劇場公園」として整備、ミュージカルやスポーツのパブリックビューイングなどに用いる。今月23日、SPAC(静岡県舞台芸術センター)の「マハーバーラタ」(宮城聡演出)でこけら落とし公演をする。既成劇場との相乗効果を高め、回遊できる劇場街を目指す。
高野之夫区長は、文化による街づくりを推進してきた。「2人だった文化担当職員を100人ほどに増やした。文化政策は区行政の中心」と強調する。
かつて東京では、バブル経済の好況期に計画された劇場が次々と建った時期がある。1980年代後半から90年代にかけてだ。それらは舞台芸術を創造、発信する専門施設という性格が強かった。対して今回の新設ラッシュは、にぎわいの創出に力点がある。
ミュージカルのロングラン公演に実績のある劇団四季は3劇場の開場をひかえる。いずれも都市再開発の一環で建つ。四季は一時、浜松町で3劇場を運営していたが、再開発にともない「春」と「秋」の2劇場を新街区で再開場する。JR東日本グループの開発計画「ウォーターズ竹芝」の施設で、新しい「春」は約1500席と四季の劇場としては最大規模。2020年9月、米ブロードウェーのディズニー・ミュージカル「アナと雪の女王」の翻訳上演でオープンする。
一方、1200席の「秋」は20年7月の開場で、四季ゆかりの歌やダンスで構成する舞台(高橋知伽江構成・台本)でスタート。さらに21年4月には、1200席の有明四季劇場が開場する。こちらは閉館する大井町地区の2劇場の後を受ける施設で、住友不動産の「東京湾岸有明複合開発プロジェクト」の一角にできる。
ミュージカル充実
東京では「劇場地図」の変転とともに、ミュージカル興行の拡大が続きそうだ。注目されるのは、劇団四季が創作ミュージカルを企画の柱に打ち出したことだ。英国の小説を題材にした気鋭の劇作家、長田育恵台本・作詞による「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(小山ゆうな演出)が、浜松町に残る自由劇場で20年10月に幕を開け、試金石となる。
ミュージカルの拠点のひとつだった青山劇場は閉館したが、青山地区の再開発の中で再開場が浮上するかどうかも注目されよう。
他方、渋谷地区では1973年オープンの老舗、PARCO劇場が新装オープンする話題がある。渋谷パルコの建て替えで休館していたが、20年3月、再開場する。席数は458から636に増えるが、質の高い現代演劇やバラエティー・ショーで中劇場の独自性を保ってきただけに、伝統が継承される。ピーター・シェーファーの現代演劇「ピサロ」(渡辺謙主演)がこけら落としとなる。
[日本経済新聞夕刊2019年11月12日付]
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