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中華つまみにゆっくり 東京・神楽坂の「隠れ家」バル

日経MJ

手前から「ジュウバーの肉団子」、「中華屋のカレー」、「クラフトジン」
手前から「ジュウバーの肉団子」、「中華屋のカレー」、「クラフトジン」

気軽に利用できるバル業態の繁盛店が多くなってきた。日本の飲食文化に定着したという事だろう。しかし、イタリアンやスパニッシュが多く、目新しさは少ない。そんななか、中華料理を主軸にしたバル業態で集客に成功しているのが東京・神楽坂にあるjiubar(ジュウバー)だ。

約56平方メートルの店内にテーブル11席、カウンター8席を配し、月商は400万円を超える。運営は東京・青山や長野県の軽井沢に出店する中華料理の人気店「希須林(きすりん)」だ。

驚くのはその立地。東京メトロ神楽坂駅(東京・新宿)から徒歩3分という場所ではあるが、雑居ビルの3階という目立たない場所だ。それなのに看板は出していない。扉は質素なスチールで、案内をしてもらわないとわからないだろう。

しかし、その扉を開けると、シンプルで落ち着いた空間が広がり、まるでハイクラスのバーのようだ。大手服飾店の店舗内装などを手がける著名なデザイナーの仕事というのもうなずける。「この地域は看板を出すのにも費用が発生したり、細かな決まりがあったりするので諦めた。オープンから2カ月は苦戦したが、口コミやネット情報をきっかけに軌道に乗った」と川上武美店長。

居心地のいい空間で体に優しい中華料理を楽しめる

川上店長は希須林軽井沢店で研さんを積んだ料理長でもある。一番人気は、宮城県産のブランド豚「ジャパンX」を使った「ジュウバーの肉団子」(680円)だ。粗びきした豚肉を最小限のつなぎでまとめ、ギュッと引き締まった“肉肉しい”食べ応えにした。

この肉団子に適度な酸味の濃厚な甘辛ソースをまとわせる。このソースがくせ者で、見た目はいわゆる肉団子の甘酢のようだが、複雑で年数を重ねた紹興酒のような深みがあり後を引く。団子を食べ終わってもソースをつまみにグラスを空けるお客も珍しくない。

最近話題のスパイスカレーをjiubar風にアレンジした「中華屋のカレー」(680円)は、さっぱりとした酸味がアクセントになった、シメに食べたいひと皿だ。

「栄養のバランスが良い豚肉料理でおいしいお酒を楽しんでもらうのがテーマ」と川上店長。料理は700~1000円代が中心なので、あれこれと注文して楽しみたい。

ドリンクはビールだと「プレミアムモルツ」(730円)、自家製シロップを使った「レモンサワー」(680円)など手ごろ。厳選したワイン、シャンパン、シングルモルト、クラフトジンなどもそろっているので、バーとして2件目利用も出来そうだ。

最近、中華料理の高級化が止まらないと感じている。筆者も何度か痛い目にあっており、高級中華料理と聞くと“びくっ”とするようになった。その一方で、ちまたの中華料理店を「町中華」として再評価する動きもあるが、デート利用には二の足を踏む。

jiubarは、居心地のいい空間で、大人がゆっくりと食事と酒を楽しめる貴重な店だと感じた。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2019年11月8日付]

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