ディレクターがトレンドや着こなし発信 ビームスF

日経MJ

新たなファンとして若者世代も取り込む(東京都渋谷区の店舗)
新たなファンとして若者世代も取り込む(東京都渋谷区の店舗)

国内の「スーツ離れ」が進むなか、セレクトショップ大手のビームス(東京・渋谷)が手掛ける紳士服ブランド「ビームスF」が気を吐いている。最大の強みは、情報発信力。ブランド責任者が積極的に露出するほか、ファッション解説の動画やカタログを自社で制作する販促策が奏功する。創立40年を超えてなお、正統派のおしゃれを楽しむ層の支持を得ている。




ブランドディレクターが私服を使いコーディネート事例集

10月中旬。東京メトロと小田急線が交わる代々木上原駅(東京・渋谷)前のカフェ「ナンバー」に、20人のファッション愛好家が集まった。上品なスーツに身を包んだ彼らのお目当ては、ビームスFのディレクター、西口修平氏が手がけた著書の発売イベントだ。

愛好家はいずれも抽選で選ばれており、私服を使って100種のコーディネートを紹介した同書について語る西口氏の話に、熱心に耳を傾けていた。

西口氏の出版記念イベントには20人のファンが集まった

国内では「働き方改革」の進展などを背景に、カジュアルな服装で働く「脱スーツ」を推奨する企業が増える。このため、既製服を取り扱う紳士服大手の業績はいずれも低調に推移。総務省の家計調査によると、「被服及び履物」(2人以上世帯)でスーツの2018年の総支出額は5161円と、00年に比べて半減した。仕事着といえばスーツという価値観は過去の遺物となりつつある。

そこで業界が力を入れるのはオーダースーツだが、ビームスFはあえて既製品にこだわりを見せる。欧米から仕入れたスーツを幅広くそろえるほか、日本人の体形に合わせて海外ブランドと開発した独自のスーツも用意。1978年創立の古参ブランドだけに、40代以上の男性を中心に長年のファンを集める。

秘訣は、ブランド責任者らによる情報発信を強める戦略だ。西口氏のようなファン向けイベントに加え、中村達也クリエーティブディレクターも最新のトレンドを解説する動画を2016年から動画共有サイト「Youtube」で公開する。

スーツ離れが進む若者世代も取り込み

また19年からは他社と協業し、独自のカタログ「ミスタービームス」を発行した。様々なチャネルを使い、着こなしや商品の楽しみ方を提案している。

若者にも親しみやすい媒体で発信したこともあり、19年2月期は20~30代の販売額が前年同期比で32%増えた。スーツ離れの中心とされる若者世代を新たに取り込む紳士服ブランドは珍しい。

品ぞろえもさらに充実させる。今年1月には約170カ国で衣料品を販売するイギリスのネット通販サイト「ミスターポーター」で、ビームスFの商品取り扱いを始めた。出店のきっかけは「西口氏や中村氏がイタリアの展示会で注目を集めたこと」(ビームス)だったという。おしゃれな人材を前面に出す販促戦略が、思わぬ形で成果につながったようだ。

ユニクロがスーツの取り扱いを増やすなど紳士服業界の競争は激しさを増す。ビームスFは発進力とこだわりの商材を武器に、逆風下で攻勢に出る。

(堺峻平)

▼ビームスが1978年に設立した紳士服ブランド。「F」は「FUTURE」の頭文字を指す。欧州のクラシックなデザインに、現代的な解釈を加えた重衣料や大人らしいカジュアル用品を取り扱う。平均価格帯は3万2千円ほどで、価格と質のバランスがいい良質なスーツ展開に強みを持つ。

[日経MJ 2019年11月1日付]

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