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村上さんは「商品ではなく人で買っていただく」と、日本語の表現にも気を使う

村上さんは「商品ではなく人で買っていただく」と、日本語の表現にも気を使う

「美しさを表現する日本語は無数。うまく使い分けて強い印象を与えていく」。宝飾品製造販売のフェスタリアホールディングス(HD、旧サダマツ)のフェスタリア ビジュソフィア銀座本店(東京・中央)の村上輝さんは接客日本一にも輝いた逸材だ。昨年、有能なジュエリーコーディネーターが集う接客コンテストで優勝した。顧客の再来店や購入につながる秘訣は独自の「類義語メモ」だ。国文学仕込みの美しい言葉の数々で顧客の心をつかんでいる。

村上さんは親しみやすい人を「多くは語らないけど印象的に話す」と定義する。村上さんは知識をただ披露したり、距離をすぐに詰めたりするわけではない。初めての来店客にも印象を残すため、意識しているのが日本語の表現だ。

もともと外国人の後輩店員のために作ったというメモには接客で使うワードとその類義語が並ぶ。例えば「似合う」という言葉の横には「自然な」「溶け込む」「肩肘張らない」など12の言い方を併記する。この表現を来店客の話に合わせて効果的に使うことで、本人が似合うのを実感してくれる。今では同店の多くの後輩が接客の参考にしているという。

とはいえ、親しみやすさがあれば、すぐに購入につながるわけではない。一方で、強い印象を与えることで積極的にアプローチをしやすくなるという。店頭で接客した顧客には3日以内に丁寧なお礼の手紙を送る。電話対応でも以前買った商品の不具合などを確認し、もし商品に気になる点があれば来店してもらい相談に乗る。村上さんは「買って下さいと言うのではなく、こんな商品ありますかと聞かれる関係」づくりを心がける。

接客スタイルの基礎になっているのは大学時代だ。古典文学を専攻して日本語の表現を学んできた経験が生きている。さらに、きめ細かなサービスは中国料理レストラン「銀座アスター」でのアルバイト経験が生きている。どの料理を薦めるか、どの順番で出すか、会話を通じて顧客ごとの最適なコースを作り上げる。気づけば社内のロールプレイングコンテストで1位になるほどになった。

大学卒業後にフェスタリアへ入社すると決めたのは、同社の貞松隆弥社長との出会いだ。就活の説明会で自社の強みを話す会社が多いが、貞松社長はダイヤの歴史や人類との関わりなど「(商品の)本質を熱く話してくれた」といい、強い印象と親しみを持った。

初配属は横浜の店。勉強熱心で宝飾の知識をたくさん詰め込んだのが裏目に出て、来店客の聞いていないことまで話してしまうこともあった。しかし、13年に同店の店長に抜てき、後輩の接客を客観視するうちに今のスキルを身につけたという。今の周囲の評価は「ひけらかすわけではなく引き出せる」(銀座本店の関根正樹店長)という。「重要なのは何を買うかではなく、誰から買うか」。その笑顔には自信がのぞく。

(佐伯太朗)

[日経MJ2019年10月28日付]

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