日本でも米有名大学の教科書 採用大学を出版社が支援

2019/10/26付
デジタル時代でも書物による勉強の重要性は変わらない。画像はイメージ=PIXTA
デジタル時代でも書物による勉強の重要性は変わらない。画像はイメージ=PIXTA

経済学の教科書を買わない学生が増え、逆風が吹く中でも健闘している教科書シリーズがある。

グレゴリー・マンキュー米ハーバード大学教授の『マンキュー経済学1 ミクロ編(第4版)』『マンキュー経済学2 マクロ編(第4版)』『マンキュー入門経済学(第3版)』(東洋経済新報社、地主敏樹ほか訳、いずれも2019年10月)は人気シリーズの最新版だ。大学の学部レベルの内容で、シリーズ共通の「学生への序文」では「将来、あなたがニュースを追いかけていようと、経営者になっていようと、大統領執務室に座っていようと、経済学を勉強してよかったと思うことだろう」と魅力を訴えている。

同社によると、販売期間が13~19年の前回シリーズは、05~14年の前々回シリーズに比べ年平均の発行部数が2割増えた。中級編も加えたマンキュー氏の教科書シリーズ全体をみると、累計の発行部数は55万部に達している。同社はノーベル経済学者のポール・クルーグマン、ジョセフ・スティグリッツ両氏の教科書も手がけ、版を重ねてきた。19年2月には、ダロン・アセモグル米マサチューセッツ工科大学教授らによる『マクロ経済学』(岩本康志監訳、岩本千晴訳)も出版した。世界に名が通った経済学者が、数式を使わずに平易に書いた教科書には強い吸引力がある。

教科書の販売が全般に振るわない背景には大学側の変化もある。大学教員の多くは今、パワーポイントを使って講義をし、教科書を指定しない場合も珍しくない。そこで同社は18年度から、マンキュー氏らの教科書を採用すると講義用のパワーポイントや学生に配信するテストを無料で提供するe―ラーニングサービスを始め、40校近くが導入している。

11年、格差是正を掲げて米ニューヨークのウォール街を占拠する運動と距離を置いていたマンキュー氏の講義を一部の学生がボイコットする事件が起きた。学生たちは同氏の教科書には「異端」とされる学説の記述が乏しく、経済格差を容認していると批判したが、「標準的な経済学」は、経済問題を議論する土台になるはずだ。どの方向に走り出すにせよ、経済学とはどんな学問なのか、見極めをつけてからでも遅くはない。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞2019年10月26日付]

マンキュー経済学I ミクロ編(第4版)

著者 : N・グレゴリー・マンキュー
出版 : 東洋経済新報社
価格 : 4,400円 (税込み)

アセモグル/レイブソン/リスト マクロ経済学

著者 : ダロン アセモグル, デヴィッド レイブソン, ジョン リスト
出版 : 東洋経済新報社
価格 : 4,180円 (税込み)