尿もれには、膀胱トレーニング・骨盤底筋体操で備える

NIKKEIプラス1

2019/10/26付
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自分の意思に関係なく尿が出てしまう尿もれ。性差なく発症し、加齢に伴って悩まされる人は多くなる。冬になって寒さで膀胱(ぼうこう)が刺激されると起こりがちになるだけに、秋のうちから原因を押さえて予防したい。

中高年世代に多い尿もれにはいくつかの種類があり、男女によってもその原因が異なってくる。

女性にもっとも多いのはくしゃみや咳(せき)、歩行などで腹部に力が入ると尿がもれてしまう「腹圧性尿失禁」だ。

主な要因は骨盤内の膀胱・子宮・直腸などの臓器を下側から支える「骨盤底筋」という筋肉が加齢などの理由で弱くなること。このため尿を止めておく尿道口が緩んでしまうことで起きる。

「加齢のほか、肥満や妊娠・出産も骨盤底筋へのダメージとなり、20代で尿失禁に悩まされる人も少なくない」と語るのは女性医療クリニックLUNAグループ(横浜市)理事長・関口由紀医師。緩んだ筋肉を鍛える「骨盤底筋体操」で改善できるという。あお向けに寝て両膝を立て、肛門を締める。そのまま尿道まわりの筋肉を締めたり緩めたりを繰り返す。

ただし「簡単な体操にもかかわらず、なかなか正しく継続できていない場合もある」(関口医師)。改善が見られないようなら、泌尿器科などクリニックを受診した上で、看護師や理学療法士、あるいは骨盤底筋体操の知識があるスポーツトレーナーなどの指導のもとに行うと、より効果を見込める。

男女関係なく起こるのが、急な尿意を催してトイレまでガマンできずに漏らしてしまう切迫性尿失禁。その多くに膀胱が過敏になって尿がそれほどたまっていないのに尿意を催してしまう「過活動膀胱」という症状が見られる。40~50代以降に多い疾病だ。昼夜の頻尿も過活動膀胱によって引き起こされる。

五本木クリニック(東京・目黒)の桑満おさむ医師によると「日中に8回以上トイレに行くようなら過活動膀胱を疑ってみる」。通常は膀胱に尿がたまると脳がその信号を受けて排尿をコントロールする。詳しい原因は不明だが、制御ができず少量の尿でも膀胱が過剰に反応するものだ。

桑満医師によると「加齢のほか、神経的な要因、糖尿病などの患者にもよく見られる」という。治療は薬物療法が中心となる。近年、薬の選択肢も増えており、医師と相談して自分に合った治療を進めるとよいだろう。また、生活習慣を見直すことも有効。水やカフェインの取りすぎに注意する。意識的に排尿間隔を空けて、膀胱の容量を大きくする膀胱トレーニングを併用すると効果的だ。

男性に固有に起こるのが、排尿後に尿道の途中に残っていた尿が少量もれる「排尿後尿滴下」。いわゆる「おしっこのキレが悪い」状態だ。膀胱の直下にある前立腺と長く曲がりくねった尿道が「男性特有の尿もれの原因」(桑満医師)になる。

尿道周囲の筋力の低下で発生するほか、50代で増加する前立腺肥大によって膀胱や尿道が圧迫されて生じる可能性もある。症状が続くようなら、前立腺の検査を受けた方がいい。

尿失禁は基本的に生命に関わる病気ではないが、放置したままだと衣類を汚すなどQOL(生活の質)が低下していく。その結果、うつ病などメンタルを病むことにもなりかねない。

関口医師、桑満医師はどちらも「尿失禁が原因で外出やスポーツなどのレジャーをあきらめてしまうのはもったいない」と口をそろえる。「症状を自覚したら早めに泌尿器科を受診して、アクティブな人生を取り戻してほしい」と呼びかけている。

(ライター 大谷新)

[NIKKEIプラス1 2019年10月26日付]