航空機用ベアリング、顧客と工場「先読み力」でつなぐ日本精工 山本力さん

日本精工の山本力さん
日本精工の山本力さん

日本精工で産業用ベアリング(軸受け)の営業に携わる山本力さん(30)は航空機のエンジン向けの担当が長い。人命を預かる航空機に欠かせない部品として、生産や技術面の要求はベアリングの中でも格段に高い。営業現場では何より顧客の信頼をつかむことが重要になる。営業先のメーカーと自社の生産現場の「先」を読み、両者を円滑につなげるのが役割だ。

航空機エンジン向けのベアリングはタービンなどを回す軸に使う重要部品で、1機当たり数十個が使われる。自動車のエンジンなどに使う汎用品よりも形状は複雑で、顧客ごとの特別仕様。より高精度・高品質が求められる。その分、生産量の調整は難しい。

だが顧客の航空機エンジンメーカーから、月産30台だった発注が、急に60台に変わるようなケースがある。工場では様々な仕様のベアリングを生産しており、その中で特別仕様品を増産するには関係者との綿密な調整が必要になる。生産計画の全体を見渡しながら、ボトルネックとなる生産工程を特定し、人を増やしたり、生産品目の優先順位を入れ替えたりするわけだ。

「いくら高い技術力があっても、生産が追いつかなければ事業は成立しない。品質保証をし、その上でコストの問題もある」と山本さん。総合的な判断で受注は決まる。「日ごろの付き合いがあるから」などと油断はできない。

最新技術を理解

航空機エンジンは、一度採用されると途中で部品の生産会社が入れ替わることはほとんどない。そのため安定した売り上げが見込める半面、シェアを上げるには新規案件の受注が必要だ。その新規案件が出るのは数年に一度。既存製品に対する顧客からのニーズに応え、信頼をつかみ続けた先に、将来の新型機の受注が見えてくる。

営業では「顧客と自社の現場の双方に関する『先読み力』が欠かせない」と山本さんは強調する。日ごろから意識しているのは「分からないことはすぐに聞く」ことだ。

自身は文系だが、社内には技術専門の営業担当もいる。その中で一歩先を行くには最新の技術への理解が不可欠。顧客に出向いて需要動向をいち早く察知しつつ、自社の製品や技術の最新情報を集めて理解する。平日の大半は「工場と顧客の間を行き来してきた」と話す。

2013年から4年間、航空機担当をした際、17年に一度だけ航空機エンジンの新規部品の案件が出た。顧客からは設計面や耐熱性で最新の技術を求められ、コストでも厳しい要求を突きつけられた。社内の技術部や工場の現場に何度も通い、顧客へのフィードバックを繰り返した。仕事を円滑に進めるため、神奈川県藤沢市の主力工場の近くに家を借りたほど。この案件は無事に受注ができた。

千葉県で生まれ育ち、高校時代を成田空港のある成田市で過ごした。子どもの頃から飛行機好きで、就職先に日本精工を選んだのも関連した仕事ができると考えたから。

航空機エンジンに関する顧客からの規格ニーズは何千項目にも及ぶ。それを理解しないと品質保証はできないが、山本さんは「冊子を読み込んで理解するのが楽しい」と笑う。「顧客と専門的な会話を交わし、相手の要求を満たした製品を提供することにやりがいを感じてきた」という。

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