イカスミのソースで深い味 東京・東村山の黒焼きそば

2019/10/17付
地元メーカー製造のソース(左)をふんだんに使ったぼん天久米川店の黒焼そばは、普通盛りで大盛り並みのボリューム
地元メーカー製造のソース(左)をふんだんに使ったぼん天久米川店の黒焼そばは、普通盛りで大盛り並みのボリューム

東京都東村山市でイカスミ入りの麺料理といえば、パスタではなく「黒焼そば」だ。ソースも同市内の食品会社製で、約100店が提供する。毎年約2カ月間、食べ歩きキャンペーンを実施しており、地元関係者は市外での知名度アップにも力を入れている。

「黒焼そばソース」は市内の食品会社、ポールスタアが2008年に製造・販売を始めた。野菜とナツメグなど13種類のスパイス、イカスミを煮込む。味は中濃ソースよりやや塩辛く、イカスミ独特の苦みや甘みも感じられる。

翌09年に同社は、市内の飲食店に独自の料理として黒焼そばを出す食べ歩きキャンペーンの実施を提案した。これに約60店が参加し、通年メニューで出す店が多くなった。「様々な味付けができるよう具材は自由にし、ソースに50%以上の黒焼そばソースを使うだけでいいことにした」(桜井憲一社長)ため、見た目や味は多種多様だ。

ラーメン本舗まるみ店内の黒焼そばののぼり

JR武蔵野線新秋津駅が最寄りの中華料理店、ぼん天久米川店は「ソースの素材のよさを生かす」(志村一夫オーナーシェフ=61)ため、ソースに黒コショウとしょうゆ、砂糖を少量混ぜるだけでいためる。やや塩辛い味はソース同様で、普通盛りで通常の焼きそば大盛りに相当する量がある。志村さんは「インターネットで調べて遠くから来たという客もいる」と話す。

西武新宿線東村山駅前のラーメン本舗まるみは、麺を中国式しょうゆにあらかじめつけ、ウスターソースを混ぜていためる。レシピをつくった増田正樹さん(41)は「黒焼そばソースの塩味の強さを調整し、他店と違った味にするための工夫」と話す。中国しょうゆ独特のまろやかな甘みが混じり、黒みがさらに強くなる効果も出る。豚骨しょうゆのタレに黒焼そばソースを混ぜた「黒ソースつけめん」も楽しめる。

ねぎとのりをたっぷりのせた一翠の黒焼そばはさっぱりとした味わい

中華料理店、一翠は西武西武園線西武園駅から徒歩約10分。ソースはオイスターソースと混ぜ、キクラゲ、イカ、モヤシ、豚肉といためた後マヨネーズを散らした四角い専用皿に盛る。白髪ネギとのりをのせ、さっぱりした味が特徴だ。小島佐知子店長(58)は「見た目も味も中華っぽくないおしゃれな感じを目指した」という。

黒焼そばは市内の飲食店だけでなく、大手コンビニの弁当やサンドイッチ、おむすびの季節限定メニューにも取り入れられるようになった。ポールスタアの桜井社長は「客がもっと市外から来て、市内の飲食店が潤うきっかけになればいい」と知名度向上に期待を寄せる。

<マメ知識>焼きうどんやピザも
黒焼そばの食べ歩きキャンペーンは毎年6、7月にスタートし「黒の日」と名付けた9月6日まで開催している。黒焼そばソースを使った「創作料理」を食べると抽選券がもらえる。創作料理の内容は焼きそばに限定していないため、焼きうどん、ピザなどを出す店もある。
キャンペーン以外では、市外から来る客にも黒焼そばを出す店をわかりやすくするため、ポールスタアが店に「東村山黒焼そばだよ 全員集合!」などと銘打ったのぼりを無料で配布している。

(多摩支局長 一丸忠靖)

[日本経済新聞夕刊2019年10月17日付]