ドイツのカフェ カップ120円、500回使って返金
ドイツ・フランクフルトの旧市街に、この夏オープンしたばかりのカフェ「ホッペンワース&プロッホ」。ラテアートに飾られた香りの良いコーヒーを目当てに地元の人や観光客が次々と訪れる。持ち帰りを注文するとミント色のプラスチックのカップを手渡された。カプチーノは3ユーロ20セント(約380円)。だが請求は4ユーロ20セントと1ユーロ多い。
実はこの1ユーロが、カップの「保証金」なのだ。飲んだ後にカップを返却すると、1ユーロが戻ってくる。おもしろいのは同じ仕組みを取り入れるカフェなら、どこに返してもいい点だ。会社員のアナ・グーリッヒさんは「タンブラーだと使わない日もあるから、飲んだら返せるのは便利」と話す。
このカップは「リカップ」と呼ばれ、2016年に独南部のローゼンハイムで始まった。いまやドイツ国内3千カ所で利用できる。
取り組みを始めたリカップ社によると、ドイツの使い捨てカップの消費量は年間28億個、1時間に32万個にのぼる。コーヒーの紙コップは内側がプラスチックで覆われており、リサイクルが難しい。リカップなら洗って約500回使え、その後はリサイクル。世界で問題となるプラスチックを減らせるというわけだ。
ホッペンワース&プロッホでは他の店で導入した際、紙コップと選べるようにしていた。だが客の90%がリカップを選んだため、今では全てリカップにした。
このカフェで働く大学生のラウラ・ベッカーさんは「紙のカップでプラスチックのふたのコーヒーを持っている人を見ると、古い世代の人だと思う」と笑う。
ミント色とカプチーノ色のカップは「映える」と、インスタグラム経由で認知度が高まった。ドイツでは資源回収を促すため、水やビールを買う際に保証金を支払い、ペットボトルや瓶を返すと返金される制度が浸透する。こうした素地に若い世代の環境保護意識の高まりが合致したようだ。
カフェだけでなく、米マクドナルドの独国内の一部店舗や独フォルクスワーゲンなども導入。街を挙げて取り組む動きもある。ドイツの街から使い捨てカップがなくなる日は遠くないかもしれない。
(フランクフルト=三村真樹代、深尾幸生)
[日経MJ 2019年10月14日付]
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