離職防ぐ環境づくり 管理職の「割り振る」能力にカギ日本大学教授 安藤至大

2019/10/12付
さまざまな立場の労働者にとって働きやすい環境作りが急務になっている=イラスト・よしおか じゅんいち
さまざまな立場の労働者にとって働きやすい環境作りが急務になっている=イラスト・よしおか じゅんいち

人手不足が続いている。リーマン・ショック後の2009年に0.45倍まで低下した有効求人倍率は、その後に上昇を続けて18年には1.61倍になった。都内を歩いていると、人員の確保をできずに臨時休業している飲食店もある。多くの企業では、日常業務をこなすための人材を得ることにも困難を感じているようだ。

一時期は、日本の硬直化した雇用を流動化させなければならないという主張に注目が集まっていた。しかし現在では、いかにして人材を確保するのか、また長期的に活躍してもらうかが論点となっている。企業はこの人手不足の時代にどう向き合えば良いのか。

離職抑制を重視

まず買い手市場から売り手市場になったことに加えて、ここ数年で採用の常識が変化したことを理解する必要がある。釘崎清秀、伊達洋駆『「最高の人材」が入社する 採用の絶対ルール』(ナツメ社・19年)は、採用計画から募集、選抜を経て内定者のフォローといった一連の採用プロセスについて、一般的な「常識」と専門家の見解を対比させる形で紹介している。採用活動の経験が浅い若手社員などが陥りやすい失敗を避けるためにも、最新の知識を共有しておく必要があるだろう。

また最近は、採用と同等以上に離職抑制(リテンション)を重視する傾向がある。離職率が減れば、採用と教育にかかる費用が削減できるからだ。社員による紹介・推薦制度であるリファラル採用を活用する企業が増えている点も踏まえると、連鎖的な離職の防止にもつながる。

日本企業が人手不足に直面するのは、当然ながら今回が初めてではない。18年の完全失業率は2.4%であるが、高度経済成長期の1960年代はそれが1%台前半だった。この時代に未経験者を雇い社内で育てた企業が活用した離職抑制の手段が、今でも続く年功賃金や退職金の仕組みである。しかし最近は有名企業でも経営状況が急速に悪化する可能性もあることから、効果が低下傾向にある。よって離職抑制には別の手段を併せて活用しなければならない。

離職抑制には、労働者に気持ちよく働いてもらえる環境作りが不可欠だ。企業はこれまでとは異なり、時間外労働ができないなど働き方に制約がある社員も積極的に活用する必要がある。そのためには管理職の意識改革が欠かせない。多様な雇用契約で働く部下に対して、適切な仕事の割り振りや評価ができないと、不満を持った社員が離職してしまう。「私の時代は違った」と言って無理を強いる人を管理職にしてはいけない。

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