まるでスイーツの「花園」東大阪 聖地を彩る甘い戦い
熱戦の火蓋が切られたラグビーワールドカップ(W杯)。全国高校ラグビー大会が開かれ、ラガーマンの聖地と称される大阪府東大阪市の花園ラグビー場でも4試合が行われる。お膝元の市内の洋菓子店も、観戦みやげ用の商品開発を巡って熱い闘いを繰り広げている。
8月20日、近畿日本鉄道奈良線東花園駅の高架下に市内の洋菓子店ルジャンドルが移転・オープンした。ラグビーボール型の「ラグビーバウムクーヘン」を新発売。しっとりとした生地が特徴で袋を開けると甘い香りが漂う。ラグビー場を描いた箱に入り、お土産に最適の一品だ。
東大阪市は大小約6300の町工場がひしめくものづくりの町だ。食品関連の工場も多く、腕自慢の菓子職人も多い。千載一遇の商機を逃すまいと商品開発に余念がない。
中小企業約40社が参加する異業種交流組織「創遊夢(そゆうむ)」は焼き菓子などの詰め合わせ「The Higashiosaka!」を売り出した。近鉄けいはんな線の新石切駅近くの洋菓子店シェ・アオタニが作って販売する。ラグビーボールの形をした箱はマツダ紙工業製で、蓋の中央部をくりぬけば貯金箱として使える。マツダ紙工業の松田和人社長(56)は「東大阪の知名度アップに貢献したい」と熱がこもる。
市も和洋菓子店などをラグビーチームに見立てた「東大阪ショウテンズ」を結成。ガイドブックを作成するなど後方支援に努める。
その一つ、近鉄奈良線瓢箪山(ひょうたんやま)駅近くの、花園ラグビー場から歩いて15分ほどのコンフィセリーラパートはスイス出身のピーター・ラパートさん(54)が丹精を込めて作るケーキ「ノーサイド」を販売する。
芝を連想させる緑色のチョコレートの上にアーモンドのボール、クッキーでできたコーナーポストがのる。ベルガモットのすっぱさとチョコの甘さがスクラムを組んで味覚をガンガン攻め立てる。
最後に紹介するのは女性に大人気のパティスリー・リエルグ。東花園駅から南に10分余り歩いた住宅街の一角にある。焼き菓子「くまちゃん」にホワイトチョコでジャージーを描いた「ラグビーくまちゃん」を売り出した。味はもちろん、かわいらしい見た目が売りだ。
花園では日本戦や日本の入るリーグの試合がなく、ファンの間では地味と評される。試合はさておき、スイーツを目的に東大阪の街歩きを楽しんでみてはいかがだろうか。
地元政財界が設立した観光組織、東大阪ツーリズム振興機構などは10月20日まで、「東大阪ラグビーバル」を開催している。市内162の飲食店が参加。パンフレット持参の来店客に、ラグビーをテーマに考案した料理や飲み物などの特別メニューを500円で提供する。来店ごとにスタンプがもらえ、複数店を回るとプレゼントに応募できる「スタンプラリー」も実施する。ラグビー場のある東花園駅、河内花園駅周辺だけでなく、繁華街のある布施駅界隈などにも立ち寄ってもらう狙いだ。
(東大阪支局長 苅谷直政)
[日本経済新聞夕刊2019年9月26日付]
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