中高年に増えるネット依存 通院する患者は氷山の一角

2019/9/25付

スマートフォンの使いすぎで日常生活に支障が出る例が、子どもや若者だけでなく中高年の間でも増えつつある。スマホ依存をやめたいと思っている人を支援するため、専門外来を設ける病院や講習を実施する企業も出てきた。プライベートに加え仕事でもスマホを使う機会が多くなりがちな中高年。医師は「深刻であれば専門の医療機関を受診してほしい」と呼びかけている。

星野リゾートではスマホを預けて滞在する宿泊プランを提供する(9月11日、京都市)

「仕事が手につかない」。神戸大病院(神戸市)を受診した40代の男性会社役員は職場でも仕事と関係のないことでスマホを操作し続けてしまい、次第に長期の経営計画を立案するのが難しくなっていった。部下から「人が変わったようだ」と言われ、ショックを受けて受診したという。

スマホへの依存で多いのは、自らの意思でネットやゲームの利用時間をコントロールできなくなる「ネット依存症」。そんな患者に対応しようと、同病院は18年5月にネット依存症を専門に扱う外来を新設。患者はこれまで子どもや若者が多かったが、19年から中高年の患者の受診が目立つようになった。

同大大学院の曽良一郎教授(精神医学)は「中高年の場合、自己破産したり仕事が手につかなかったりして生活に影響が出るまで受診しない例が多く、来院する患者は氷山の一角。潜在的には子どもや若者と同程度の患者数がいるのでは」と指摘する。

ネット依存症は、アルコールや薬物依存症と異なり治療のための薬がない。仕事でネットを使うことも多いため、完全に使用を止めることもできない。治療のゴールは利用時間を自らの意思でコントロールできるようになることで、再発を繰り返す患者も珍しくない。

曽良教授は「治すのが難しいのは患者の意思の弱さではない。1人で悩まず専門の医療機関を訪ねてほしい」と呼びかける。

企業の間でも従業員のスマホへの依存に対する懸念が強まってきている。スマホなどのネット依存からの脱却を支援する「日本デジタルデトックス協会」は10月、IT(情報技術)関連企業の従業員などを対象にネット依存が心身に及ぼす影響などを伝える講習会を開く。