コンビニATMで先陣 故障厳禁、海外も展開OKI社長 鎌上信也氏(下)

バス旅行で行った伊豆の戸田温泉での職場の忘年会で(右から2人目が鎌上社長)
バス旅行で行った伊豆の戸田温泉での職場の忘年会で(右から2人目が鎌上社長)

38歳のとき、マーケティングの部署に移った。

金融機関向けATMとは異なる流通業界向けの決済端末を作ろうという動きがありました。当社は金融機関のほか官公庁などから依頼される案件が多く、自主企画する商品は少なかった。マーケティング強化の施策の一環として外部のコンサル会社を入れて商品企画書のひな型も作りました。

<<(上)銀行の支店システムを担当、顧客の声を開発の原点に

1997年には会社全体での商品企画会議を開催。そこで提案したのがコンビニエンスストア向けATMでした。消費者がコンビニに求めるものとしても、ATMは上位に挙がっていました。

企画担当者として、役員の前でプレゼンすることになりました。事前に2回練習しましたが、時間のない本番では別の内容を話しました。今思えば怖い物知らずでした。出席者から事業の損益や商流など多くの質問を受けましたが、最終的には承認を受け商品化が決まりました。

98年、日本初のコンビニATMが稼働した。

am/pm(現ファミリーマート)の店舗に最初のコンビニATMを納めました。さくら銀行(現三井住友銀行)のホストコンピューターに接続し、入出金などができる端末です。横幅は銀行向けと同じ57センチ、奥行きは少し小さくしました。

銀行の店舗は複数のATMを置いてあることが多いのですが、コンビニは1台だけ。なので故障は厳禁です。紙幣が詰まりにくい機構を導入したり、硬貨の取り扱いをやめたりと改良を重ねました。

後にこの経験が生きたのが、入金した紙幣を出金にも使う還流型ATMを中国など海外に展開するときでした。紙幣を取り扱う機構などを工夫し、くしゃくしゃの紙幣でも使えるように信頼性を高めました。

成功ばかりではなかった。

コンビニATMの前身となる「CP―1000」という端末の開発にも携わりました。インターネット経由で商品を購入し、現金やクレジットカードで決済するというものでしたが、これはヒットしませんでした。

しかし、CP―1000の開発がきっかけで、それまであまり縁がなかった流通系企業との関係ができ、コンビニATMのような事業につながったのです。

世の中が複雑になり、顧客もどんな製品・サービスが必要か見えづらくなっている時代です。ニーズを先取りできるように社長になった今、社内でイノベーション創出をテーマにした取り組みを進めています。

あのころ
ATM業界は90年代後半から再編が加速していく。OKIは99年、東芝の金融機器事業を買収。2004年には日立製作所とオムロンが事業を統合した。銀行向けなどの国内市場は成熟し、各社は新興国など海外展開に注力するようになった。

<<(上)銀行の支店システムを担当、顧客の声を開発の原点に

[日本経済新聞朝刊 2019年9月24日付]

「私の課長時代」記事一覧

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧