ぷるぷるもちもち、食感が命 佐賀・有田の呉豆腐

2019/9/19付
葛やデンプンを混ぜ、ゆっくり加熱して固めた呉豆腐の「ごどうふ膳」(ギャラリー有田)
葛やデンプンを混ぜ、ゆっくり加熱して固めた呉豆腐の「ごどうふ膳」(ギャラリー有田)

400年以上続く焼き物の里、佐賀県有田町。17世紀初頭の磁器原料の発見を機に栄えた山あいの街には、近代窯業関連施設がそろう。JRの特急で佐賀駅から約40分、福岡・博多駅からは約1時間20分で有田駅へ。呉豆腐(ごどうふ)三昧に出かけた。

呉豆腐とは、豆乳に葛やデンプンを混ぜ、ゆっくりと加熱しながら固めたもの。にがりを使って固める一般の豆腐と比べて光沢があり、ぷるぷる、もちもちしている。この食感が呉豆腐の命で、味わいは豆乳プリンに似ている。酢味噌とすりごま、醤油(しょうゆ)を混ぜて砂糖で味を整えたごま醤油や、甘口醤油、わさび醤油をかけて食べる。

高島豆腐店は戦前からの老舗で、現在は隣の武雄市に工場を持つ。毎朝4時からサツマイモやタピオカのデンプンを豆乳でとき、裏ごしして沸騰した豆乳に加える。たれ付きのパックで販売する。

呉豆腐は豆腐店のほか町内のスーパーでも売られている

有田駅の近くにあるとうふのたかはしの呉豆腐は柔らかさが特徴で、袋入りで販売している。佐賀県産の大豆「ふくゆたか」を使い、北海道産バレイショのデンプンで練り上げる。混ぜ具合、練り方で食感が変わるという。濃厚な特製ごまだれも人気だ。

小鉢にも向く呉豆腐は様々な飲食店で出され、売り出し中の鶏「ありたどり」をメインにしたご当地グルメ「有田焼五膳」にも登場。お食事処本陣やレストランまるいしなどで楽しむことができる。

呉豆腐の起源は精進料理とされ、以前はお盆に自宅で作る人もいたという。有田観光協会などによると、長崎県に呉豆腐同様、葛やデンプンで固めるごま豆腐があり、長崎に出向いた人が作り方を教わったという説などがあるが、定かではない。

「ごどうふマンゴー」はデザートに最適(ギャラリー有田)

九州陶磁文化館近くのギャラリー有田では、ホットドリンクを注文すると店内にディスプレーされた約2000客のカップから好きなカップを選べる。呉豆腐を使ったメニューも多く「有田名物ごどうふ膳」に「ごどうふカツカレー」。さらに「フルーツたっぷり名物ごどうふパフェ」、冷たいマンゴーと合わせた「ごどうふマンゴー」、「ごどうふ黒蜜きなこ」もある。

呉豆腐は強い個性はないが、その分、合わせるソースや材料とけんかせず、最近はスイーツとして食べる人も増えた。町内のスーパーでも、黒蜜きな粉や抹茶味の粉末、ソースが付いた呉豆腐が棚に並んでいた。

<マメ知識>秋の有田、見どころ満載
有田の一大イベントといえば、毎年大型連休に開催される陶器市。歩行者天国となった道路に人があふれ、今年は126万人が訪れた(主催者発表)。ただ、じっくりと有田の街を見て回りたい人には秋の陶磁器まつりがお薦めだ。今年は11月20~24日。普段は公開されていない今右衛門窯や柿右衛門窯も見学できる。九州陶磁文化館では、東京五輪のエンブレムをデザインした野老朝雄氏とのコラボ展を11月24日まで開催。呉豆腐など地元食材を使った特別メニューも町内の店舗で供される。

(佐賀支局長 中越博栄)

[日本経済新聞夕刊2019年9月19日付]

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