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老人性いぼ、気になるなら受診 美容で除去する人も 加齢に伴い顔・首・背中に…

2019/9/18付 日本経済新聞 夕刊

加齢に伴い発症する人が増えてくるのが老人性いぼ。顔や首、背中、胸などにできる良性腫瘍だ。ただ、皮膚がんの初期病変に似ており、見た目では判断しにくい。気になる人には皮膚科での受診を勧めたい。

▼背中にできた老人性いぼ

「1年前から急にいぼができた」「目立つので気になる」。国分寺駅前はなふさ皮膚科(東京都国分寺市)には40代以上の中高年患者が多く訪れる。

はなふさ皮膚科の花房火月(ひづき)医師は老人性いぼの除去を月間100件ほど手掛ける。「件数は3年間で2倍以上に増えた。患者の7割が女性で、年代別では50代と60代が3割ずつ。営業職や接客業の方が多いようだ」という。

老人性いぼは他人に感染することはないが、家族の勧めで皮膚科を訪れる人も多い。治療を受けた都内在住の会社員(59)は数年前から顔に複数のいぼができ、家族からは「いぼがうつるので風呂は最後に入って」と言われたとか。顔を拭くタオルも別々にされた。「妻から受診を強く勧められた」ので、受診に踏み切った。

いぼの治療としてはハトムギから抽出したエキスを成分とする「ヨクイニン」を配合した市販薬もあるが、老人性いぼへの効果はあまり期待できないというのが医師らの見方だ。

老人性いぼは専門的には「脂漏性(しろうせい)角化症」や「老人性疣贅(ゆうぜい)」と呼ぶ。色は茶や黒で、大きさは直径数ミリメートルから数センチメートルほど。ほくろとは異なり、硬い隆起ができる。しみのように見えることもある。

健康保険が適用される液体窒素による治療で除去できる。患部に綿棒で液体窒素を塗布し、凍結治療する。かさぶたができるが、たいていは1~2週間ほどで治る。ただ、人によって傷痕が残ることもあるという。

このため、「顔や首など目立つ場所は炭酸ガスレーザーを使う治療法を勧めている」(花房医師)。健康保険の適用対象外なので、はなふさ皮膚科の場合、「自己負担は1万~10万円程度のケースが多い」(同)。治療後はかさぶたができ、1週間程度できれいに取れる。

液体窒素やレーザーによる治療はともに入院の必要はない。治療時間は症状にもよるが、一般的には10分間程度で済むという。レーザー治療の場合は、いぼを除去した部分の傷痕が残らないようにテープで保護する必要がある。

都内に住む女性会社員(41)は目の横に直径5ミリメートル程度のいぼが4~5個あるのが悩みの種だった。「色が最近、濃くなってきた」ため、はなふさ皮膚科に足を運び、8月にレーザー治療で除去した。「これで化粧する時も気にならない」と満足げだ。

都内の男性会社員(59)も顔のレーザー治療を受けた。いぼの除去後は「同僚からも好評」と喜ぶ。

老人性いぼは良性腫瘍のため、見栄えを気にしなければ放置していても構わない。ただ、皮膚がんの初期病変に似ているというのが少々気掛かりだ。

東京女子医科大学東医療センター(東京・荒川)皮膚科の田中勝教授は「治療を数回受けたのに除去できなかったり、いぼが少しずつ広がってきたりする場合は皮膚がんの可能性を考える必要がある」と指摘する。

光を使用した虫眼鏡のような仕組みの検査装置を使って診察する。いぼの様子を10~30倍程度に拡大して光を当てながら、色素の分布や血管の構造を調べる。皮膚がんの疑いがあると判断すれば、細胞を調べる精密検査に移る。

ところで、老人性いぼはなぜできるのか。田中教授は「加齢や紫外線によってできると言われているが、詳しい原因は不明」と話す。治療法はほぼ確立されているが、発生源はなお未解明のようだ。

◇  ◇  ◇

■患者数、10年で3倍超

老人性いぼの患者数はここ数年、急増している。厚生労働省が3年ごとに実施している調査によると、治療中の患者数は2005年の1万人から17年には3万4000人に増えた。治療を終えた人や受診せずに放置している人は含まないので、発症者の数はさらに膨らむ。「背景には高齢化のほか、中高年者の美容意識の高まりがある」(花房医師)という。

皮膚の老化現象で中高年者にできる症状はほかにもある。

首や背中などにできる茶色や肌色の直径数ミリメートルの柔らかい小さなブツブツは「軟性線維腫」。皮脂の分泌が多い額や鼻、頬のあたりが黄色や肌色に直径数ミリメートル盛り上がる「脂腺増殖症」といった疾病もある。

これらも放っておいて問題ないが、鏡を見て気になる人は皮膚科に相談した方が良さそうだ。

(シニアライター 近藤英次)

[日本経済新聞夕刊2019年9月18日付]

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