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私の課長時代

銀行の支店システムを担当、顧客の声を開発の原点に OKI社長 鎌上信也氏(上)

2019/9/17付 日本経済新聞 朝刊

■OKIの鎌上信也社長(60)はATMなどの機器の開発に長く携わった。

1993年、34歳のときに課長になりました。初めてプロジェクトの責任者を務めたのが「グループ・ターンアラウンド・システム(GTS)」と呼ぶ製品です。銀行の支店のATMの後ろに専用の部屋を用意。ロボットが複数台のATMの間で紙幣の量を調整するものです。紙幣が余りそうな端末から少ない端末に移すことで、ATMの紙幣の入れ替え業務を省力化できるのが売り物でした。

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初代の製品は富士銀行(現みずほ銀行)に納めていました。私が参加したのは2代目の開発で、エラーが多い初代の刷新を急ぐ必要があったのです。様々な部門から精鋭を集めた大型プロジェクトのリーダーになりました。

■GTS2は短納期での開発で、翌94年に稼働した。

「10カ月で納入するように」と言われ、連日徹夜の開発でした。私も高崎市の事業所に泊まり込みました。事業所内に製品を2台試作して、ハードウエアやソフトウエアの様々な項目の検証を進めました。一方、週1回は顧客である富士銀行を訪れ、担当者に開発の進捗を報告していました。朝に一度、自宅に戻って支度して東京の富士銀行へ。打ち合わせ後はすぐ高崎の事業所に戻っていました。

今思えば無謀な挑戦だったのですが、10以上の新技術を入れようとしました。実現できたものでは、人との接触を避ける機能があります。超音波センサーを取り付け、GTSの進路に人が入ったら停止するようにしました。

入出金の傾向などから必要な現金の量を予測する人工知能(AI)も盛り込みました。肉体的には大変でしたが、非常に楽しく取り組みました。

■プロジェクトでは、開発以外の人とも仕事をした。

かまがみ・しんや 81年(昭56年)山形大工卒、OKI入社。11年執行役員、14年取締役常務執行役員。16年から現職。山形県出身。

開発は納期ギリギリまでかかりました。現場調査にも立ち会いましたが一部の数値は目標に達していない。それでも納期を優先し、バージョンアップを重ねて改良していこうということになりました。

プロジェクトを通じ、開発サイドでもお客さんの生の声を聞くことが大事だと気付きました。それまでは開発担当として、営業からの要望に応える仕事が中心でした。直接課題を聞くことで技術者が持っている様々な手段から最適なものを提案できます。これが私の仕事の原点になりました。

GTS2は富士銀行の25以上の店舗に入りました。全国でも約200セット納入できました。競合も製品を投入してきましたが、当社ほどの精度は出せなかったと記憶しています。

あのころ
バブル期になると、金融機関のサービス競争が活発になり、店舗のATMが急増した。窓口に並ぶより入出金の手続きが簡便だったためだ。一方、急速な普及を受け、ATMのトラブルをいち早く解決することが求められるようになり、全国規模でのサービス網の構築が急がれた。

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[日本経済新聞朝刊 2019年9月17日付]

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