焼き馬肉食べ放題、健康的でコスパもよし 東京・新宿
食事を存分に楽しみたいが、カロリーが気になる――。食いしん坊のそんな悩みに答えてくれる馬肉焼き肉の食べ放題が人気だ。
JR新宿駅から徒歩5分ほどの場所にある「馬焼肉酒場 馬太郎 西新宿7丁目店」(東京・新宿)はフランチャイズチェーン(FC)方式による飲食店の開発・運営を行う西頭(同)の馬肉焼き肉業態だ。店舗面積が約100平方メートルながら、ディナーとランチの営業で月商は700万円。右肩上がりで伸びている。
グループ会社で、馬肉の処理、加工を行う折戸商会(群馬県藤岡市)の強みを生かして業態を開発した。
馬肉といえば刺し身が定番だったが、最近は焼き肉として提供する店が増えている。なかでも馬太郎は、1899円から食べ放題が選べ、別途999円を支払えばサワーなどが飲み放題に(取材時)。食べ放題は馬肉の赤身とバラ、それと自家製の馬肉ハンバーグが基本メニュー。さらに料金を追加すれば馬刺しやレバ刺し、肉ずしまで食べ放題にできる。時間制限はどのコースも90分。
注文すると赤身とバラがセットで来る。焼き肉といっても、鉄鍋のようなジンギスカン鍋を使う。焼きながらほどよく脂が落ちるので、脂身が多いバラ肉でも食べやすい。赤身は淡泊なので、バラと一緒に食べると肉と脂のうま味のバランスがとれ、うまい。味付けはテーブルに置かれた焼き肉の塩だれやポン酢を使う。
つくねサイズの馬肉ハンバーグは、ジンギスカン鍋のフチの部分で押しつけるようしてしっかり焼いて食べると、濃厚なうま味があり、酒やご飯がすすむ。
馬肉というと特有の"香り"を気にする向きもあるだろう。これは提供される馬肉の産地によって違いがでる。同店ではカナダやアルゼンチン、モンゴルから馬肉を調達しているが、産地ごとに仕上げに使う餌が違う。
馬に限らず家畜は出荷前に食べた餌で香りは異なる。この香りは脂に影響する傾向にあり、バラなどてきめんに感じられる。たとえばトウモロコシなどの穀物で仕上げた個体は香りが穏やかで気がつかないほどだ。しかし、仕上げまで牧草を食べた個体は香りが強くなる。これは脂の色を見ると違いがわかり、穀物で仕上げた馬の脂は白っぽく、牧草で仕上げた馬の脂には牧草のカロテンが影響して黄みがかった脂になる。
ちなみにこうした違いは選べないので、ジビエなどが苦手な人には勧めない。むしろ馬肉の特有の香りを風味として楽しめるならこのメニューはオススメだ。
同店はいつも盛況で、確実に利用するなら予約は欠かせない。人気の理由は"コスパ"の良さもあるが、馬肉は牛肉に比べてカロリーが低く、タンパク質や鉄分が多い。部位にもよるが、一般的にヘルシーな肉と呼ばれている。
同店の開発に関わった三谷憲明氏は「馬肉料理は馬刺しが定番料理だったが、それ以外のおいしい食べ方を伝えたかったので馬肉焼き肉・しゃぶしゃぶ業態を立ち上げた。もっと広めて家庭の食卓に当たり前に並ぶようにしたい」と話す。
最近は、近隣のジムなどに通う運動好きなお客様のリピートが目立つという。同店は今後パッケージ化してFC展開を中心に店舗拡大をする予定だ。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"美味しい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2019年9月13日付]
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