経営者にとって何かを決めるために別の何かを犠牲にするトレードオフはつきものです。常に決断の連続ですが、自分が腹落ちしたことでないと人や組織を動かすことはできないものです。軸を変えて付加価値戦略にすることに確信が持てた書物です。

さらに我が意を得たりと感じさせてくれたのが著名なコンサルタント、内田和成さん編著の『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』です。競合と同じ土俵では闘わないこと、国内の事例を数多く用いて解説していて読みやすいです。

人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTなどが生活に溶け込もうとするなか、どのような技術やイメージを商品やサービスに落とし込むか。経営者の力量が問われている。

従来型の商品開発では新しい価値と生活体験を提供するのは難しくなり、先を読む力が求められています。ITの浸透が生活をよりよい方向に変化させるDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉がまだ人口に膾炙(かいしゃ)する前に出版された理論物理学者、ミチオ・カク氏の『2100年の科学ライフ』は経営者と技術屋でもある私の好奇心と興味を満たしてくれました。

短期(2030年)、中期(70年)、長期(2100年)の視点からそれぞれの時代に生活者がどう変わっていくかが具体的に書いてあり、引き込まれます。デジタルの仮想空間と現実との融合をどう結びつけたらビジネスにつなげられるのかイメージしやすいです。

本は自分だけでは到底、体験できない様々な世界を見せてくれる案内人ですね。

(聞き手は編集委員 田中陽)

[日本経済新聞朝刊2019年9月7日付]

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