現金使わず1週間 たこ焼きも銭湯もキャッシュレス
政府は、現金を使わず、スマートフォンなどで支払うキャッシュレス決済を推進する。現金を持たずに日々の生活がどこまで可能なのか、記者(61)が試してみた。
キャッシュレス生活は、8月の1週間の夏休みで実施してみた。決済手段は、スマホのアプリによるQRコード決済、交通系の電子マネー、クレジットカードの3つだ。普段も交通系の電子マネーとクレジットカードは使うが、QRコード決済をするのは今回、初めて。
夏休み初日。さてどこへ出掛けるか。銭湯がいいな。キャッシュレス決済が可能な銭湯はあるか探すと、見つかった。東京・品川の「中延温泉 松の湯」。交通系の電子マネーを使って電車を乗り継ぎ、松の湯へ向かう。
午後4時ごろ到着。フロントにはスマホ決済用のQRコードを備えてある。スマホをカメラモードにして、QRコードにかざし読み込む。画面を見て入浴料金を打ち込み、「支払い」をタッチ。支払額と残高が表示され、支払いは完了。
すぐに浴場へ。自宅のユニットバスとは異なり、ゆったりと湯につかれ、満足。
ひとっ風呂浴びた後は、近くの居酒屋で生ビール。飲食代の支払いはクレジットカードで。ちょっと飲み過ぎたのでタクシーで帰宅。支払いは交通系の電子マネー。1日、キャッシュレスで過ごした。
3日目。昼から東京・墨田の向島橘銀座商店街(通称・下町人情キラキラ橘商店街)へ。町の商店では、スマホによるQRコード決済はそれほど進んでいないが、この商店街では加盟する約80店のうち3分の1が導入済みだ。
しばらく全長約400メートルの商店街をぶらぶら歩く。人気店の「たこ焼 たい焼 こんこん」で昼食用にたこ焼きを購入した。支払いはQRコード決済で。
商店街には、加盟店で買った総菜などを持ち込んで飲める居酒屋「もちこみ屋」がある。たこ焼きをつまみに生ビール。ここも支払いはQRコード決済でOKだ。
この後、電車で東京駅の大型書店へ。気になっていた本をまとめ買い。クレジットカードで支払い、電車で帰宅。この日もキャッシュレス。
5日目。午後、上野の美術館へ。チケット購入はクレジットカードで。早めの夕食を老舗のそば屋でとる。
和食系は現金のみの支払いというところが多く、記者が足しげく通う居酒屋はQRコード決済もクレジットカードも使えないが、このそば屋はクレジットカードで支払いできた。
自宅が近いので歩いて帰宅。途中、コンビニエンスストアで缶ビールと総菜などを買う。支払いはQRコード決済。キャッシュレスの日々が続く。
最終日。自宅でほぼ終日読書。いったん外出し、ドラッグストアで買い物をしてからカフェで休憩。いずれもQRコード決済。1週間のキャッシュレス生活が終わる。
キャッシュレスで過ごしてみた実感は、とにかく便利。QRコード決済は面倒そうだと思っていたが、すぐに慣れた。小銭が要らずスムーズに会計できるため、現金に比べ支払いは楽だ。特にレジで前の人がキャッシュレスで支払ってくれると、行列のストレスも軽減される。
今回は利用しなかったが、インターネット通販や自動販売機などもキャッシュレス決済ができる。東京などキャッシュレス化が進んでいる都市部では、3つの決済手段があれば、現金を使わずに生活を送ることは可能だ。
注意したいのは、QRコード決済もクレジットカードも加盟店のみ利用できるということ。医療機関や行政機関はキャッシュレスに対応していないところも多く、印鑑証明だけは現金払いせざるを得なかった。財布を持たずに街に出るのは、まだ早いようだ。
◇ ◇ ◇
国内普及2割、現金志向なお
国内のキャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネー、スマホのアプリなどを使用)比率は現在、20%程度。安全面の不安などから現金志向が強い人もいるほか、高齢者はQRコード決済に必要なスマホの所有率が低いことなども背景にありそうだ。政府は普及に弾みをつけるため、10月の消費税増税に合わせキャッシュレス決済に伴うポイント還元策を実施する。キャッシュレス決済の市場規模は、2018年度の約82兆円から23年度に126兆円に拡大するとの予測もある。
(大橋正也)
[NIKKEIプラス1 2019年9月7日付]
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