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私の課長時代

まさかの飲食店経営、「秘手」も繰り出し奮闘 キリンビール 布施孝之社長(上)

2019/9/3付 日本経済新聞 朝刊

■キリンビールの布施孝之社長(59)は初任地の神戸支店で、レストランの支配人を経験した。

入社6年目の1987年、弊社の神戸支店と阪急百貨店(当時)が神戸市三宮の地下街でリニューアルしたレストランを共同経営することになり、支配人を命じられました。

「ビール会社に入社して支配人とは」。思わぬ人事に戸惑いましたが、東京でキリンが運営していたビアホールで修業したりするうち、徐々に飲食店経営に熱中していきました。

ただ、リニューアルしてからしばらくは閑古鳥が鳴いていました。昔ながらの店を転換して、若者に人気の「隠れ家レストラン」を目指したため、常連だった高齢のお客さんが離れてしまったのです。赤字補填のお願いに毎月支店に出向くたび、支店長のイライラが募っているのがよくわかりました。

何とかしなければと一計を案じ、女性社員らに友人を連れて決まった時間に店に来てもらいました。いわばサクラ作戦です。ずいぶん安直な作戦でしたがうまくいき、繁盛店の口コミが拡散。開業4カ月ほどで黒字化を達成し、ようやく汚名を返上することができました。

■43歳で初めての東京本社勤務となる。

神戸支店の後、都内の支店などを経て2003年に初の本社勤務となりました。営業企画担当の部長代理です。

着任時は43歳でした。周囲には若手も多く、本社は従来なじんでいた支店とは文化も違います。何より驚いたのは社員の使う言葉が理解できないことでした。「商品の見える化」など抽象的な言い回しがあまりに多いのです。これでは現場にどうしてほしいか伝わりません。

■営業現場と本社の溝を埋めるための変革を訴える。

ふせ・たかゆき 82年(昭57年)早大商卒、キリンビール入社。10年小岩井乳業社長。15年1月から現職。千葉県出身。

本社にいた2年間は小難しい言い回しを改めて現場にわかりやすいメッセージを伝えることや、逆に現場の意見に耳を傾けることの重要性を訴えました。

営業を担当していた若手の頃から本社の指示に違和感を覚えることも多く、「消費者の求めるものを真剣に考えているのか」というもやもやとした不満もありました。本社勤務でこうした思いを強くしたので、現場を代表するつもりで感じたことは臆せず上司にも意見しました。

その一つが飲食店向けビール事業の強化です。当時のキリンでは家庭用商品が優先されていました。ただ飲食店は消費者にブランドを知ってもらう重要な場でもあります。こうした現場の思いを上司にも進言し、戦略上の優先度を高めるよう訴えました。

あのころ
アサヒビールが1987年に「スーパードライ」を発売すると、ビール市場を席巻した。それまで圧倒的首位の座にあったキリンビールは対応が後手に回り、2001年に2位に転落。この間、ビール系市場は94年をピークに縮小を始め、減少が止まらない状況が続く。

[日本経済新聞朝刊 2019年9月3日付]

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