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ロシア伝統の微炭酸飲料クワス 夏の風物詩1缶40円

日経MJ

2019/9/2付

ロシアの首都、モスクワの大型スーパーの一角。ずらりと並ぶ茶褐色の大小ペットボトルを、買い物客が迷わずカゴに入れていく。日本では見慣れない飲み物の正体は、伝統的な微炭酸飲料「クワス」だ。

ライ麦と麦芽を発酵させ、わずかにアルコール分を含む。コーラに似た色で、ライ麦で作る黒パンをジュースにしたような風味が特徴だ。爽やかな喉越しと、独特の甘酸っぱさが根強い支持を集める。

店頭価格は500ミリリットル缶で25ルーブル(約40円)と手ごろ。ビール大手「オチャコボ」など複数の飲料メーカーがしのぎを削り、小麦を使った白いクワスや黒スグリなどのフレーバーもある。代表的なブランドの一つ「ニコーラ」はロシア語で「コーラじゃない」を意味する。販売元によると、伝統的な製法で作ったクワスはビタミンや酵素が豊富で、代謝を整え、疲労回復の効果があるという。

1千年を超える歴史を持つクワスは、旧ソ連時代は路上でタンクからコップに注ぎ、販売する光景が夏の風物詩だった。1991年のソ連崩壊でコーラなどの海外ブランドの飲料が本格的に流入し、一時は生産量が激減した。それでも2000年代半ばに飲料メーカーが商品化に乗り出し、徐々に復権した。

ベラルーシのビール大手によると、同国では1人あたり世界最多の年平均6.6リットルのクワスを消費する。2位はロシアの4.6リットルでポーランド、ウクライナが続く。健康志向も追い風に消費量は拡大しているが、旧ソ連時代(年18リットル)に比べればまだ伸びしろは大きいという。

今夏のモスクワは8月半ばまで気温が上がらず、肌寒い日が続いた。ロシアメディアによると、記録的な冷夏でクワスの販売も低調だった。今夏にクワスを飲んだという女性会社員のオリガさん(33)は「やっと夏が来た気がする」。クワスは現在でも、ロシア人にとって夏を象徴する「ソウルドリンク」のようだ。

(モスクワ=小川知世)

[日経MJ 2019年9月2日付]

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