通勤スニーカー、天然革なら水洗いOK 洗剤は弱酸性
クールビズや働き方改革でスニーカー出勤が増えている。毎日履くと汚れが気になるが、革製だとジャブジャブ洗っていいか、不安だ。大人のスニーカーの手入れやプロの技を教わった。
「大人のスニーカーも、注意点さえ守れば、子どもの上履きなどと同じように水で洗って大丈夫」。靴のクリーニングサービス「くつリネット」を手掛けるホワイトプラス(東京・品川)の魚森敦史さんは話す。
注意するのは素材だ。基本的に帆布とも呼ばれるキャンバス地や天然皮革製のスニーカーは水洗いOKだが、合成皮革は避けた方がいい。魚森さんは「合皮は表面の革がはげていたり、傷がついていたりすると、水をかけることで劣化が進む」と話す。
くつリネットでは、傷の程度で合成皮革の洗浄は断ることもあるという。傷が目立つ場合は乾いたタオルで汚れを拭き取り除菌する程度にとどめよう。
まずは、外側はゴミを落とし、内側は除菌しよう。靴ひもを外し、砂やほこりをブラシで払い落とす。靴下をはくとはいえ、菌が付着しているので、除菌スプレーを吹きかけたタオルで内側を拭く。「目に見える汚れは気になったときに洗い落とせばいいが、内側の除菌は定期的にしたほうがいい」(魚森さん)
除菌スプレーを吹きかけるだけでは、菌を殺せても死骸は残り、臭いが出続ける。奥まで拭き取り、洗い流すのがベストだ。
台所スポンジ 泡立つように
次は、バケツに水を張り、洗剤を入れて溶かし、泡立ててスニーカーを洗う。洗剤の量はスポンジが泡立つ程度に加減を見ながら調整する。靴用洗剤を使うなら、表示にある用量を。例えば、ある製品は水200ミリリットルに洗剤5ミリリットルを入れてかき混ぜる。台所用のスポンジなどを使い、アッパー部分や内側、インソールも一緒に洗おう。靴底はメラミンスポンジが落ちやすい。
洗剤は素材をよく確認してから選ぶこと。全て革製なら、弱酸性の洗剤にする。刺激が強めの中性や弱アルカリ性の洗剤は、革を傷める恐れがあるからだ。
魚森さんによれば、弱酸性ならハンドソープでもいいという。革製品専用の洗剤で保湿成分が入っていれば、汚れ落としと同時に潤いを補ってくれる。
アッパー部分が天然皮革でも、足を入れる内側部分で合皮を使っている靴もある。その場合は、内側に水が入らないように注意しながら天然皮革部分をスポンジで洗う。
キャンバス地のスニーカーは中性や弱アルカリ性洗剤も使えるが、部分的に革が使われている場合は、まとめて弱酸性の洗剤で洗う方が安心だろう。
一通り洗い終わったら水ですすぐ。「洗剤が残らないようによく確認を」と話すのは、靴の修理やクリーニングを行う「職人工房」(千葉県八千代市)の遠藤誠さん。「弱アルカリ性の洗剤が残っていると、紫外線に反応して黄ばみの原因になる」という。
保湿成分が入っていない洗剤で革のスニーカーを洗った場合は、乾かす前に保湿クリームを塗っておく。
干す際は、風が当たりやすい日陰で自然乾燥させる。遠藤さんは「ドライヤーなどの熱風を当てると革が縮んだり靴に使われている接着剤が溶け出したりする恐れがある」と忠告する。注意しよう。
細かい汚れに 防水スプレー
乾かした後も「ゴム素材のソールやロゴなどに残っている細かい汚れが気になる場合は、防水スプレーが役に立つ」と魚森さんが教えてくれた。スプレーを吹きかけた綿棒でこするときれいに落ちる。プロも実践する技で、色落ちの心配はないので、白以外の部分にも使える。
白以外のスニーカーを洗う場合は、色落ちに注意したい。水洗いする前に、洗剤をつけたタオルで目立たない部分を強めにこすってみよう。タオルに色がついたら洗わない方がいい。色移りも気になる。2色使いのスニーカーで、片方の色が別の色に混ざってしまうと、プロでも元に戻すのが難しいという。
白い靴ひもは漂白剤でつけ置き洗いすればきれいになる。色付きのひもは靴と同様に色落ちや色移りを試してから洗う。平たいタイプの靴ひもなら、アイロンがけをするときれいに仕上がる。
洗いたてのスニーカーを履いて、さっそうと歩き、残暑を乗り切ろう。
(ライター 藤原 達矢)
[NIKKEIプラス1 2019年8月31日付]
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