同病院への電話相談では、月約50回ほどある相談の半数が母親のほか、周りの人からの相談という。
明治学院大の西園マーハ文教授(精神医学)は「摂食障害は家族にも心理的負担がかかる。専門家の伴う家族会で対処方法を学び、本人の症状が改善されることもある」と指摘。さらに「職場などカミングアウトできれば働きやすくなったり、通院しやすくなったりすることも期待できる。周囲が摂食障害を知ることも大事」と訴えている。
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発症ピークは10代後半
摂食障害は10~30代の女性に多く、発症のピークは10代後半だ。有病率は特に若年層で多いが、最近は高齢化の傾向にあり、40歳以上の割合は20%超となっている。生物学的、心理・社会的など複数の要因から発症し、心身両面からの治療が必要となる。回復には約6割が5年前後、2割が10年以上を要するとされる。
摂食障害には(1)極端な食事制限をする「神経性食欲不振症(拒食症)」(2)むちゃ食いと体重増加を防止するために嘔吐するなど代償行為を繰り返す「神経性過食症(過食症)」(3)過食するが代償行為のない「過食性障害」――などがある。
厚労省研究班が2014~15年に実施した調査によると、摂食障害は推計で約2万5千人で、このうち拒食症は約1万3千人で、過食症は約5千人としている。ただ全国4カ所の支援センターを統括する摂食障害全国基幹センター(東京都小平市)の安藤哲也センター長は「およそ半数の患者は治療を受けていない」とみている。
(金子冴月)
[日本経済新聞夕刊2019年8月28日付]