形式的には、親による子どもの養育は、施設養護、里親、ファミリーホームといった多様な形態が展開している。ただ、そのなかでも施設よりも小規模な里親やファミリーホームが優先される。なぜなら、そちらのほうがより「本来の家族」に近く、それゆえに子どもの育ちにとって望ましいと考えられているからだ。形式的には多様な親子関係が、実質的には、実親による実子の養育という「モデル」に近づけられていくわけである。

生きづらい単身

朝日新聞取材班の『平成家族』(朝日新聞出版・19年)には、独身を続ける単身者の「生きづらさ」が豊富な事例とともに紹介されている。多様な生き方の一つであるべき「単身」という選択肢が「苦しい」のは、社会がそういった生き方に対応していないからだ。「単身」が問題なのではない。社会のあり方が、「単身」という生き方を問題化している。

日本社会は、旧来型の性別分業社会から、ジェンダー均等に基づいた共働き社会に徐々に移行しつつある。これは、いってみれば「旧(ふる)い標準」から「新しい標準」への転換である。だとすれば、この社会の根本的シフトは、多様化とはいえないのかもしれない。共働きという新しいライフスタイルからこぼれ落ちる単身者やシングルペアレントの生活は、現状の日本では苦しいままだ。

今現在の社会の変化に対して、「家族が多様化している」「個人化している」とシンプルに理解してみせることは容易だ。しかし実際に進行しているのは、もっと複雑な事態である。家族は、多様化しているともいえるし、多様化していないともいえる。私たちは、私たちが知る家族の引力に引き寄せられたままだ。

[日本経済新聞朝刊2019年8月24日付]

フランスの同性婚と親子関係――ジェンダー平等と結婚・家族の変容

著者 : イレーヌ・テリー
出版 : 明石書店
価格 : 2,700円 (税込み)

平成家族

著者 : 朝日新聞取材班
出版 : 朝日新聞出版
価格 : 1,512円 (税込み)

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