エンタメ!

映画セレクション

映画『ディリリとパリの時間旅行』

2019/8/23付 日本経済新聞 夕刊

高畑勲が敬愛したフランスのミッシェル・オスロ監督のアニメ最新作。オスロは影絵ふうの陰翳(いんえい)豊かな画面で知られるが、本作では驚嘆するほかない色彩美を開花させた。世界アニメの最先端を行く作品だ。

東京・恵比寿のYEBISU GARDEN CINEMAほかで公開(C)2018 NORD-OUEST FILMS-STUDIO O-ARTE FRANCE CINEMA-MARS FILMS-WILD BUNCH-MAC GUFF LIGNE-ARTEMIS PRODUCTIONS-SENATOR FILM PRODUKTION

舞台はベル・エポック(19世紀末~20世紀初頭)の華やかなパリ。ヒロインのディリリはニューカレドニアから密航してやって来た混血の少女だ。パリで開催中の万国博覧会に出演して踊っているとき、何でも配達する仕事のフランス青年オレルと知りあい、オレルの荷物配達用の三輪車でパリの街を走りまわる。

おりから、男性支配団と名乗る謎の集団が、少女たちを誘拐する事件が続発する。ディリリとオレルは男性支配団の情報を集め、その宝石店襲撃計画を阻止する。そのため、かえってこの集団の攻撃の的にされ、ついにディリリが誘拐されてしまう。オレルはディリリと誘拐された少女たちの救出に向かうが……。

まずはパリの風景の美しさ、輝くばかりの色彩に圧倒される。写真から合成したアニメだというが、写真のリアルさと絵画的幻想美が絶妙のバランスで結合されている。パリの街の魅力をアニメ独自の高度な映画的次元に高めている。以前の影絵ふうの陰翳が消えて空間がいささか平板になったうらみはあるが、このカラーはオスロの新境地だ。とくにラストの夜の青さは陶酔的というほかない。

ベル・エポックのパリで活躍した有名人の総登場にもわくわくする。色々な本で見た顔が次々に出てきてともかく楽しい。とくにルソーはじめ、ピカソ、マティス、モネ、ドガといった画家たちの絵が直接引用できるのは、アニメならではの利点で、巧みな趣向だ。

物語的にも冒険活劇の体裁をとって、主人公たちが動く、動く。アクションの横溢(おういつ)にも心が躍る。夏休みの親子鑑賞に最適の傑作だ。1時間34分。

★★★★★

(映画評論家 中条省平)

[日本経済新聞夕刊2019年8月23日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL