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オムライス激戦区、父と子で腕振るう 東京・高円寺

日経MJ

写真はカレーソース。ライスだけで150グラムもあるのでかなりのボリューム
写真はカレーソース。ライスだけで150グラムもあるのでかなりのボリューム

オムライスやナポリタンなど、昔懐かしい洋食メニューが今、再注目されている。

東京メトロ丸ノ内線東高円寺駅(東京・杉並)から徒歩2分のオムライス専門店「103街区」を取材した。今年8月にオープンしたばかりだが、ホテルや大使館の料理長を務めたシェフが作るオムライスが話題になり、早くも盛況だ。

ランチ、ディナーとも価格は同じ

店舗は約37平方で、カウンターをメインに13席。オープンから3週間足らずで、ランチは約1回転半し、多いときには20食以上。ディナーも1回転以上し、15~20食を売り上げる。

開店直後から集客に成功した背景には、ツイッターをはじめとしたSNS(交流サイト)の効果的な発信があった。SNSを担当するオーナーの山神廉弥氏は、現役のフリーランスのネットマーケッター。SNSを活用したマーケティングで、大手企業と組んで仕事をしている。この手法を飲食店でも生かせると考え、同店を開業した。

その手法とは、同店はウェブサイトも広告出さず、ツイッターのみの発信に徹すること。店内のメニューには「SNSに写真とハッシュタグをつけた投稿で100円引き」と記載し、口コミを誘導。「店舗からの発信よりも、お客様の感想やレビューのほうが信頼性は高い」と山神氏は手法の一端を明かす。

こうしてお客があげた投稿を店のアカウントでリツイートし、ホーム画面にレビューを集め、盛り上げている。

しかし、ビジネス先行だけの開業ではなかった。山神オーナーは「父の作るオムライスが一番おいしかったので、その味を残したくて専門店を開業した」と語る。タンザニア日本大使公邸の料理長だった父親が定年退職するにあたり、この味を残したいと決心。父親を説得し、親子でお互いの得意を活かしながら二人三脚でのスタートを切った。

同店が出店した高円寺エリアは、オムライスの有名店がひしめく激戦区だ。エリアに潜在的に需要があると見込み、あえて近隣に出店を決めた。

オムライスは「トマトソース&ケチャップ」、「カレー&スパイス」など、ソース違いで4種類。カレーのみ1200円で、それ以外は1千円。ライスはチキンと玉ねぎを炊き込んだ「ベーキライス」を使う本格派。風味豊かなライスをふんわりとしたオムレツでくるむ。この“オム”の厚みが絶妙。薄すぎず厚すぎず、なめらかで思わずうっとりする舌触りだ。

クラシカルな薄皮オムでもなく、昨今見かける半熟卵オムとも違う。それにフレンチなどの技法で仕上げた自家製ソースを絡めれば、オムライス好きの筆者も屈指の味だと感じた。

人気の「デミグラス&トマトソース&スパイス」は一般的なデミソースほど重くはなく、さっぱりとしたトマトの酸味にぴりっとしたスパイスが印象的だ。プレートからあふれんばかりのソースがかかった姿は、神々しくもありSNSに必須な写真映え要素も十分。

ドリンクはアルコールもそろえ、つまみも用意する。「パストラーニ」「サバの煮込み カレー風味」(各500円)など、昼夜を問わずちょい飲み需要にも応える。お互いに実力派のプロ父子が組んだ、実に令和らしい必勝タッグと言えるだろう。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2019年8月23日付]

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