「死ぬのが怖い」 患者の苦悩、向き合うケア広がる医療・福祉の現場、宗教者ら常駐

沼口医院の「カフェ・デ・モンク」では入居者と臨床宗教師らが一緒になってパステル画制作などを楽しむ(岐阜県大垣市)

岐阜県大垣市の沼口医院は臨床宗教師が駐在するメディカルシェアハウス「アミターバ」を運営している。月水金曜日の午後は地域住民にも開放して「カフェ・デ・モンク」を開く。入居者の山口一美さん(75)は亡くなった夫の思い出や「なぜ自分がリウマチで苦しまねばならないのか」といった悩みを担当宗教師の隠一哉さんに打ち明ける。「困ったことやうれしかったこと、何でも話ができる」と、山口さん。

沼口諭理事長は生家がお寺で医師でも僧侶でもある。地域包括ケアが進んで在宅のみとりに立ち会う機会が増え、「医師も看護師も多忙な一般の病院で本当にケアができるのか」と考えるようになった。カフェ・デ・モンクを宗教師の活動拠点とし、在宅の患者や家族から希望があれば宗教師を派遣している。

臨床仏教研究所(東京・中央)は臨床仏教師の育成などに力を入れている。同研究所の神仁研究主幹は「本来は老・病・死の苦しみに寄りそうのが仏教」と話す。東京慈恵医大病院(東京・港)では神氏ら僧侶3人が緩和ケア診療部のスタッフとして医師とともに回診や個別面談をしている。

「地縁や血縁の共同性が薄れ、ケアする新たな場が求められるようになっている」。上智大学グリーフケア研究所の島薗進所長は指摘する。うつ、引きこもり、自死などスピリチュアルケアが必要な分野は広がっており、「将来はスピリチュアルケアの場があるのが当たり前になるだろう」と島薗所長は予測する。

◇  ◇  ◇

講座やシンポ 人材育成進む

スピリチュアルケアを支える人材育成は着実に進んでいる。日本スピリチュアルケア学会は2013年からスピリチュアルケア師の認定を始め381人を認定済み。医師、看護師、介護士、サラリーマン、主婦ら宗教的背景がなくても講座を受けて認定されている。

臨床仏教研究所は講座やシンポジウムを開き臨床仏教師を15人認定した。16年には仏教、キリスト教、神道など宗教や宗派を超えた日本臨床宗教師会が発足し、181人の臨床宗教師を認定した。東北大、上智大、龍谷大など大学も人材育成に積極的になっている。

あそかビハーラ病院のような常駐はまだ少なく、週に1回程度、臨床宗教師らが訪問するケースが多い。人材を配置しても、保険の加算にならないことなどが影響しているようだ。

(編集委員 宮内禎一)

[日本経済新聞夕刊2019年8月14日付]

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
注目記事
ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント