写真映えスポットや高架下 五輪マラソンみるならどこ
東京五輪まで1年を切った。五輪の花形、マラソンのコースを自転車で実際に走ってみて、お薦めの観戦スポットを探った。
五輪開幕までちょうど1年となる7月24日。男子、女子ともに号砲がなる時刻に合わせて、午前6時に新国立競技場前からスタートした。時折太陽が顔を見せる曇り空。スタート時の気温は26.4度と「夏日」の基準となる25度を少し上回った。
走り出してすぐの新宿区大京町(A)付近の歩道には、高さ10メートル程度の樹木が立ち並ぶ。コース脇には新宿御苑が広がり、競技場近くの神宮球場周辺も含め、涼をとれそうな木陰が多い。
さらに靖国通りに入って少し進むと、都営新宿線の曙橋駅(B)の近くで、外苑東通りの高架が頭上を横切る。日陰の範囲は木陰よりずっと広く、ひんやりとしている。
マラソンのスタート時刻は当初午前7時の予定だったが、暑さ対策で1時間前倒しされた経緯がある。観戦する側も、暑さをしのげる日陰スポットをチェックしておきたい。特定の選手を待つにせよ、レース全体を楽しむにせよ、長居しやすい環境に越したことはない。
都心は高速道路や鉄道が縦横に走っているので、高架下が狙い目だ。暑さのみならずゲリラ豪雨対策にもなる。たとえば永代通りの日本橋と茅場町の中間地点(C)は、同じ高架下にコンビニエンスストアもあり、水分補給の飲料を買うのに便利。新橋駅付近の鉄道の高架下(D)は多少うるさいが涼しい。
レースそのものを堪能したい人に向いているのが、選手が3回通る交差点だ。全コースのなかで神保町(1)と日本橋(2)の2カ所だけ。それぞれスタートから7キロと10キロの地点にある。しかも3回目に選手が通るときは、日本橋が30キロ手前、神保町が35キロと、いずれもレース終盤。ラストスパートをかける選手がいてもおかしくなく、レース展開が見逃せない。
ただ両地点とも日陰がほとんどないので、目当ての選手が通過した後はいったん移動するなど暑さ対策も忘れずに。体力に自信がなければ避けた方が無難かもしれない。
15キロ地点の最初の折り返し地点となる浅草・雷門前は、東京スカイツリーを望む「インスタ映え」スポットだ。東京タワーに向けて、銀座の中央通りへ。ブランドショップが軒を連ねるクールな街並みと、選手の熱気の対比が面白いだろう。
長い距離を見通しやすいのが、神保町から皇居前(3)にかけての直線道路だ。起伏が少なく、選手が目の前を通り過ぎた後も背中を追える。駆け引きや順位の入れ替わりなどを楽しめそうだ。
ここまで自転車で走ってきて、じわりと疲れが出てきた。ペダルが重くなり、だらだらと流れる汗が目に入る。青空の下で、いつの間にか気温は30度を超えている。
時計を見ると午前8時40分。男子選手ならほとんどがゴールしている時間だ。「自分の足で走るのはもっと大変だろう」と1年後に思いをはせながら、もうひとふんばりと自分に言い聞かせる。
ゴール直前の見どころが40キロすぎの四谷4丁目付近(4)だ。35キロあたりからアップダウンを繰り返しながら坂道を上ってきた選手たちが、最後の急坂に挑む。失速する選手もいればペースを上げる選手もいて、ドラマが生まれる可能性がある。
坂を上り切ると、すぐに競技場が見えてくる。選手を待ち受ける大歓声が聞こえてくるような気がした。
実際に自分の足で回ってみて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が「東京の魅力がつまった史上最高のコース」と自賛するのも納得できた。観戦では日陰を優先するか、レースをとことん堪能するか。体力や当日の体調を踏まえて、とっておきの場所を選びたい。
もっとも大会組織委の大嶋康弘さんによると、地下鉄を乗り継いで複数のスポットを転々とするファンが多いそうだ。ワンセグのテレビ中継などを頼りに、目当ての選手と"伴走"するのもいい。水分補給のドリンクを片手に、筋書きのない2時間ドラマを楽しもう。
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猛暑なら観戦やめる決断も
気象庁によると、スタート時刻の午前6時の東京の平均気温は、女子が走る8月2日で25.5度、男子の9日で25.6度。早朝から「夏日」の25度を超える。東京五輪の参加標準記録は男子2時間11分30秒、女子2時間29分30秒。記録的な猛暑だった2018年の8月2日はスタート2時間後に当たる午前8時に「真夏日」の31.4度、3時間後の午前9時に32.7度まで上昇した。日本生気象学会の指針では、28~31度で「外出時は炎天下を避ける」とされる「厳重警戒」。観戦をやめる勇気も必要か。
(宇都宮想)
[NIKKEIプラス1 2019年8月3日付]
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