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画像はイメージ=PIXTA

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人工知能(AI)をテーマにした著作や論考が花盛りだ。AIは社会をどのように変え、人間にはどんな「知」が求められるのか。AIは人類を滅ぼすといった悲観論を展開する著作が目立つ一方、変化に対応する方法を提案する著作も増えてきた。

人間は意思決定をAIに委ねるようになり、「データイズム」が「ヒューマニズム」に取って代わる――。ユヴァル・ノア・ハラリ氏は『ホモ・デウス(上・下)』(2018年9月、柴田裕之訳、河出書房新社)でこんな未来予測を示す。中谷巌氏は、『「AI資本主義」は人類を救えるか』(18年12月、NHK出版新書)でハラリ氏を批判し、互いに支え合う「包摂」の思想をもとに、人類がAIの進む方向を適切に指示できれば、人類の未来は明るいと訴える。

猪木武徳氏は、AIにも得手不得手があると論じる。『デモクラシーの宿命』(19年6月、中央公論新社)に収録された「人工知能には何ができないか」と題する論考では、「必要とされるのは、技術をうまく使いこなせる成熟した精神、つまり知性と道徳のバランス」と強調する。

小川仁志氏は『AIに勝てるのは哲学だけだ』(19年1月、祥伝社新書)で、AI悲観論を「AIが高度に発達して人間の能力を超え、人間を支配さえするという論調」、楽観論を「AIは人間の役に立つ便利なテクノロジーで、今のコンピューターの延長線上にあるとの考え」と整理する。悲観論・楽観論のどちらが正しいかはわからないが、「思考できる人間になればAIには超えられない」というのが著者の見解で、「物事の本質を批判的かつ根源的に考え、言葉で表現する」哲学の手法を使った勉強法を具体的に示す。

ネットに情報があふれ、AIによる技術革新が様々な分野で起きるなかで必要とされる「知」とは何か。藤垣裕子・柳川範之著『東大教授が考えるあたらしい教養』(19年5月、幻冬舎新書)では、「情報を選別し、情報を結びつけて活用し、情報をもとに考える力」が今の時代に求められる「教養」だとし、教養の身につけ方を紹介する。AI時代の「膨大な数の余剰人員」(ハラリ氏)への道から抜け出すのはそう簡単ではない。

(編集委員 前田裕之)

[日本経済新聞2019年7月27日付]

「AI資本主義」は人類を救えるか―文明史から読みとく (NHK出版新書 571)

著者 : 中谷 巌
出版 : NHK出版
価格 : 886円 (税込み)

AIに勝てるのは哲学だけだ――最強の勉強法12+思考法10 (祥伝社新書)

著者 : 小川 仁志
出版 : 祥伝社
価格 : 864円 (税込み)

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