目の前でじっくり焙煎15分 イオンのカフェ・千葉市
イオンリテールは4月、千葉市に新業態「マメイロ バイ カフェランテ」を開業した。コーヒー豆と輸入食品専門店に初めてカフェを併設。厳選した生豆を店頭で焙煎(ばいせん)し、丁寧に抽出したコーヒーなどが支持を得ている。仕事帰りや買い物ついでに立ち寄る来店者に加え、コーヒー愛好家らの需要を取り込む。
JR海浜幕張駅から約徒歩10分、高層マンションの建設が進む開発地区、幕張ベイパーク内の食品スーパー「イオンスタイル幕張ベイパーク」に出店した。店先ではコーヒーの生豆を焙煎する音や香ばしい香りが感じられる。
イオンリテールは2011年から輸入食品やコーヒー豆を扱う食品専門店「カフェランテ」を展開している。マメイロのカウンターには約30種類の生豆を並べ、購入者は好みの量や焙煎の度合い、ひき方を選択。その場で15分かけて焙煎するこだわりようだ。
従来の店舗でもコーヒー豆にこだわっていたが、販売商品は既に焙煎し200グラムに小分けしていた。新業態について、カフェランテ・ドロゲリア商品部の吉沢研二部長は「消費者のニーズが多様化し、こだわりを持つ人が増えてきている。買い物の楽しさを伝え、『コト消費』を促したい」と話す。
欧州や東南アジアから輸入したパスタやお菓子、コーヒー豆の売り場の横に約20席のイートインスペースを用意した。商品の購入に加え店内でコーヒーを飲んでもらう。一緒に出すナッツとともに会話も弾むことで「時間消費」を味わってもらう戦略だ。
人気コーヒーの一つはマメイロブレンドだ。店内で提供する際、購入者はサイホンかハンドドリップの2種類から抽出方法を選ぶ。サイホンは蒸気圧を利用し高温で抽出する方法で、コーヒーの豊かな香りを楽しめるという。ハンドドリップは従業員が豆の膨らみ具合を見ながら丁寧にゆっくりとお湯を注ぐ。
当初、30~40歳代の女性を主な購買層に据えていたが、開店してみると10歳代の学生を含め、幅広い層に支持を得ているという。想定外だったのは「仕事帰りの男性会社員がふらっと訪れ、自宅で飲むためのコーヒー豆を買って帰ること」(吉沢氏)。15分かかる焙煎を待てない来店者もいるため、鮮度を意識しつつ売れ筋商品はあらかじめ焙煎した物を用意して対応している。
新規顧客の開拓に向け、6月からはネットを生かした取り組みも始めた。事前にネット通販サイトで豆の種類や量、焙煎度合いなどを選択。注文した商品を店舗で受け取る仕組みだ。横浜市から訪れる人もいるといい、ネットと店舗を活用し顧客のニーズに応じた販売手法を模索する。
「マメイロ バイ カフェランテ」には豆や色、迷路の意味を持たせた。どれにするか迷ってしまう迷路のような楽しさをコーヒーで伝えたいとの思いからだ。吉沢さんは「消費者の暮らしに彩りをもたらす店にしたい」と意気込む。スーパーの特徴や個性を示す上でも一役買う。
(原欣宏)
[日経MJ 2019年7月24日付]
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