映画『トイ・ストーリー4』子供は成長、ベテランは…
オモチャの視点でオモチャの世界を描く、という斬新な発想で世界初の長編フルCGアニメとして1995年に誕生。99年に続編の『2』が作られ、2010年にはアカデミー賞長編アニメ賞受賞の『3』で、オモチャの持ち主のアンディが大学生になってカウボーイ人形ウッディとの別れが来た。
そしてジョシュ・クーリーの長編映画監督デビュー作になる4作目は持ち主が幼い少女ボニーに交代、ウッディの出番は減るが、彼には仲間たちを助け、ボニーを見守る仕事がある。
幼稚園へ体験入園のボニーを心配するウッディは、彼女がゴミ箱に捨てられたプラスチック製の先割れスプーンを使い、人形を作って「フォーキー」と名付け、夢中になるのを見た。
ボニー一家がキャンピングカーにオモチャも積んで旅に出た先で出会うオモチャや町に出たウッディの仲間たちの冒険が楽しい。ウッディが、かつての仲間だった美しい羊飼い人形のボーと再会する陰気なアンティーク・ショップ、移動遊園地の賑(にぎ)わいも見ものだ。
陶器人形のボーと別れて9年、ウッディは「オモチャの役目は持ち主の子供のそばで見守ること」と思ってきたが、ボーは「私は持ち主を求めず、運命は自分で切り開く」と言う。大会社のサラリーマンと自営業の違い、といったところか。
子どもは成長する。前作までのアンディから幼児のボニーへと持ち主が交代したことでそんなことをしみじみと感じさせるのが原案から関わるアンドリュー・スタントンの脚本で、彼は人情の機微を忘れない。
既製品のオモチャの中に手作りオモチャを加えて新風を吹き込み、陶器製の美女ボー・ピープの現代女性らしい旺盛な自立心が、人生のベテランともいうべきウッディを刺激。それによって彼が下す決断にサラリーマン人生の行く末が見えて来たりするのも興味深い。1時間40分。
★★★
(映画評論家 渡辺祥子)
[日本経済新聞夕刊2019年7月12日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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