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今も上空700キロ、自作衛星と高専結ぶ10年の軌跡 高専に任せろ! 2019 宇宙に挑む(下)

2019/7/11付

砂を敷き月面に模した場所を探査機が走行する実験を行う都立産技高専の学生たち

東京都荒川区南千住の高層住宅街の中にある東京都立産業技術高等専門学校・荒川キャンパス(都立産技高専)。その上空、はるか700キロメートルを1日2回、通過する人工衛星がある。

2009年1月の打ち上げ以来、地球にモールス信号を送り続けているのが都立産技高専の人工衛星KKS―1、通称「輝汐(きせき)」だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH2Aロケットの衛星相乗りプロジェクトに参加。著名な大学や企業に交じって、相乗りした6機の中で唯一、高専として選ばれた。縦横高さがそれぞれ15センチで、最小サイズだった。

■町工場が破格の値段で引き受け

製作したのは宇宙科学研究部(当時は同好会)の学生たちだ。無線も電源も構造も、5年かけて全て自作した。特徴ある衛星の名前は地域から公募し、近隣の中学校の学園祭「輝汐祭」が元となった。「汐」という漢字はキャンパスが位置する「汐入(しおいり)」という地名にもある。土地の名前を冠する衛星にはもう1つ、地元との絆の記憶が詰まっている。

製作途中、学生たちはある部品の金属加工を巡り壁にぶつかった。「JAXAが求める精度にどうしても届かない」。断られるのを覚悟で荒川区の町工場に協力を求めたところ、こう言われた。「なんでもっと早く言わないんだ」。下町ならではの厳しくも温かいエールを受けながら、破格の値段で引き受けてくれたという。

最終的には地元の中小企業を中心に他大学など40の組織が協力。製造コストは通常の6~7分の1程度で済み、1機約200万円で完成した。

地元の力を結集して完成した衛星だが、JAXAに選定された後も苦難は続いた。ロケット本体から衛星を分離する機構の製作に与えられた期限は1年半。「衛星本体と同じくらいの労力がかかった」

熱狂したあの頃から10年が経過したが、「今も午後4時になると情報通信やロボット、医療など他分野の部員も集まってきてしっちゃかめっちゃかになりますよ」。研究室を運営する石川智浩准教授は言う。

製作現場に案内してもらった。校舎5階の一角、部屋の前では月面を表現するジオラマの土台を組み立てて、用意した砂を広げて探査機の走行実験中だった。

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