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池上彰の大岡山通信

2019/7/8

池上彰の大岡山通信

学生から関連した質問が寄せられています。問題意識を持つことは、新しい世界を知るための第一歩になります。大切なことは知識の多さではありません。一緒に考えてみてください。

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学生A 「どんな政策をすれば日本経済はよくなるのだろうか」

池上教授 「学生諸君には、まさにその答えを自ら考えてみてほしい。仲間と議論し、意見をぶつけ合うことが大切だと思います。考えるための情報や物事の見方を提供するのが私の役割だと考えている」

学生B 「金もうけの学問とは何か」

池上教授 「講義で『経済学は金もうけの学問ではない』と説明した点に関心を持ってくれたのですね。個人がもうけることとは異なるけれど、強いて挙げるなら企業の経営を考える経営学は、『もうける』という目的に近いのではないか。利益が出ていなければ厳しい競争に生き残ることはできないはずです」

学生C 「面白いと思った経済学の論文は何か」

池上教授 「論文というかたちではないけれど、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』という名著があります。学生時代に読みました。宗教や宗派という視点から、人々の経済活動について捉えている点が面白いと思いました」

学生D 「日本経済は為替の円安・ドル高で利益を得ているのか」

池上教授 「とてもよい着眼点ですね。確かに、自動車や機械のような輸出が大きい産業から見れば、円安は売上高を増やす重要なカギになるでしょう。ところが、海外から原料や部品を輸入している企業にはコストアップ要因になります。プラス面とマイナス面があることを理解しておく必要があるでしょう」

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学生E 「これまでの人生で最も達成感を感じたことは何か」

池上教授 「経済学とは直接関係ないけれど、答えましょう。NHKの記者時代を振り返れば、現在の文部科学省にあたる役所を取材して書いた特ダネが全国放送のニュースで流れたときです」

「大学で教えるようになってからは、円高と円安の仕組みを説明して学生に理解してもらったときでしょう。教室の最前列にいた学生が、思わず『わかった!』と声をあげてくれました。あの喜んだ姿を、いまもハッキリ覚えています」

20世紀の終わりに冷戦が終結しました。東西分断の象徴だった「ベルリンの壁」が崩れるとは夢にも思いませんでした。

規制や障壁がなくなり、グローバル化とよばれる時代を迎えました。グローバル化の反作用ともいえる現象もあります。トランプ大統領が唱える米国第一主義に象徴される「保護主義」がその代表例といえるでしょう。世界史を百年の長さで振り返れば、これもいつか来た道です。

いま経済学部で学んでいる学生だけでなく、将来、志そうという高校生にも、「自分ならどんな時代の処方箋が描けるか」ということをぜひ考えてみてほしいのです。

[日本経済新聞朝刊2019年7月8、15日付]

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