バブル崩壊で修羅場に直面 経済学者・村上泰亮を熟読大阪取引所社長 山道裕己氏

野村ではM&A(合併・買収)助言など投資銀行部門が長かった。

88年に野村が資本提携した米M&A助言会社のワッサースタイン・ペレラ(WP)に送り込まれました。その3カ月後に、米食品・たばこ大手のRJRナビスコを巡る買収合戦が勃発します。WPは250億ドルでRJRナビスコの敵対的買収を成功させた米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の助言役に雇われており、緊張感に包まれたオフィスで世紀のディールをつぶさに観察しました。

この買収戦の全貌を描いた『野蛮な来訪者』には当時のウォール街の激しい競争社会が生き生きと描かれています。その後、米国から戻ってM&A助言ビジネスを立ち上げますが、アドバイスがタダ扱いだった当時の日本は顧客がなかなか手数料を払ってくれません。お金を払ってもらえるプロフェッショナルの仕事を思い出させてくれるこの本に、何度も励まされました。

スポーツに関する本も好む。

『野球術』は成田空港の書店でたまたま手に取りましたが、大当たりでした。大リーグの名監督や名選手への取材に基づいて科学的に書いており、野球好きの人間にはしびれる本です。

英国に通算10年駐在したので(海沿いの自然の地形をそのまま利用したゴルフコースの)リンクスで何度もプレーしました。箱庭的なゴルフ場と違ってリンクスはむき出しの自然が相手です。完膚なきまでにたたきのめされたはずなのに、夕暮れに染まったリンクスのフェアウエーは息が止まるほど美しい。本場のリンクスの紀行をつづった『リンクスランドより』を読むとまぶたにあの光景がよみがえります。

(聞き手は編集委員 川崎健)

[日本経済新聞朝刊2019年7月6日付]

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