アート&レビュー

映画レビュー

映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

2019/7/5付 日本経済新聞 夕刊

少し前に『アベンジャーズ/エンドゲーム』の一員として別次元の存在を知る世界激変の渦に巻きこまれたが、今回は赤と紺のスーツを脱ぎ、ヨーロッパへ夏休み旅行に出かけるのが、実はスパイダーマンの高校生ピーター・パーカー(トム・ホランド)だ。アベンジャーズを仕切るニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)の電話は無視。この旅でMJ(ゼンデイヤ)に愛を告白する!

東京・有楽町のTOHOシネマズ日比谷ほかで公開中

ところが旅先のヴェネチアに巨大怪物が出現した。ここで謎のスーパーヒーロー、ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)が闘う様子を見たピーターは、彼こそが亡きアイアンマンのトニー・スタークに代わるヒーローだと思う。

前作『スパイダーマン:ホームカミング』の監督でもあるジョン・ワッツは、青春映画の枠組みにアメコミ映画らしい波乱万丈を加えたスピーディーな展開、鮮烈な映像で父のように慕うトニーを失ったピーターの心の痛みとそこからの再生を描き出す。

旅先で怪物に襲われた友人たちを救うため、スパイダーマンであることを隠して活動するピーターだが、自信のなさと不安で大人の野望に翻弄されてしまう。そんなピーターをニック・フューリーは怪物の脅威と戦わせようとしている。

何者かが仕掛ける仮想現実がピーターを苦しめる。やはりトニー・スタークから次世代を担うために託されたサングラスはヤル気まんまんのミステリオに渡そうか。だが16歳の高校生ピーターは迷いながらも成長して、優れた能力を持つ者の果たすべき義務に気づくのだ。

MJにも必死の思いで愛を告白するが、彼女のほうはすべてをお見通し。そのカッコ悪さこそ青春の証しだろう。しかもピーターの秘密はMJにバレバレ。高校時代は思い込みの時でもあることを学んだのだ。2時間9分。

★★★

(映画評論家 渡辺祥子)

[日本経済新聞夕刊2019年7月5日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL