自動調理鍋を使ってみた ほったらかしで時間生む
毎日の食事作りは手間がかかるが、外食や総菜にばかり頼るのも避けたい。炊事の手間をぐっと減らし、材料を入れるだけで料理が完成する電気自動調理鍋が人気と聞き、試してみた。
夕食作りは時間との戦い。平日は手早くできる丼物やいためものに偏りがちだった。最近人気の自動調理鍋なら、煮物など手の込んだメニューも短時間で仕上がり、予約調理ができる機種もある。元来ずぼらな記者(38)には材料と調味料を入れて「ほったらかし」なのも魅力だ。
まずはティファールの電気圧力鍋「クックフォーミー エクスプレス」(実勢価格は税込み3万7千円前後)を試してみた。予約調理はできないが、強い圧力であっという間に料理が出来上がる。150種類の内蔵レシピの9割が圧力調理時間が10分以内だ。
早速、内蔵メニューから「鶏手羽の甘酢炒(いた)め」に挑戦する。材料や手順も液晶画面の表示に従うだけ。手羽元と調味料を入れ、蓋を閉めると調理開始。帰宅から30分もたたずに完成した。肉はしっとり。濃いめの甘辛ダレがしっかりと肉に絡んでいる。冷凍ご飯を解凍し、味噌汁とプチトマト、作り置きのひじき煮を添えれば、夕食の献立が整った。
「骨付き肉など普通の鍋ではパサパサになりがちな材料も短時間でジューシーに仕上がる」(ティファール)。ティファールの機種は焼き目を付けてから煮込むこともできるというので、ローストビーフも作ってみた。バターでさっと焼いてから圧力調理。外は香ばしく、中身は軟らかい。普段なら1~2時間はかかるが、20分で出来上がりだ。
シャープ「ヘルシオ ホットクック」(無線LAN付き、容量2.4l型で同5万4000円前後)は食材の水分を使う無水調理が得意。鍋の中を自動で混ぜる「まぜ技ユニット」で「味のしみこみ加減が難しい煮物もムラなくおいしくなる」(シャープ)。
「チキンと野菜のカレー」は鶏肉、野菜にルウを入れるだけ。水も不要だ。圧力調理ではないので70分ほどかかるが、油を使わずヘルシー。野菜のうまみも凝縮している。
普通はタマネギをじっくりいため、水を足した後はアクとり。コンロに張り付きながら、1歳の娘のことも気になるところ。記者も実際、目を離したすきに、タマネギを焦がすこともあった。火を使わなければ、調理中に買い物にも行けてしまう。
家電コーディネーターの戸井田園子さんは「時短家電でなく時間を生む『時産』家電。ロボット掃除機や食器洗い機に匹敵する便利さだ」と評価する。知的家事プロデューサーの本間朝子さんは「普通は20分以上かかる料理に自動調理鍋を使うと楽」と話す。
久々にフライパンでハンバーグを焼いてみると、コンロや壁に飛び散る油が気になった。自動調理鍋ならば台所を汚さず、掃除の手間も省ける。以前より家事の合計時間を1日30分は減らせている。煮魚など食卓の定番メニューもあり、操作も簡単なので「家事に手間を掛けたくない」「火を使いたくない」という高齢者世帯でも重宝しそうだ。
気になったのはサイズ。一般的な炊飯器より大きく、置き場所は悩みどころか。平日ほとんど料理をしないような人は持て余すだろう。調理後の臭いを指摘する声もある。「内蓋についているパッキンが臭いを吸着しやすい」(戸井田さん)。特にカレーのような料理だと敏感な人は気になるかもしれない。
調理家電は決して安くないが、食事は毎日のこと。疲れて出前や外食に頼る費用を考えると、記者にとっては無駄な出費ではないと感じた。
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朝の強い味方 心にゆとり
新しい家電はスペースも取るし、使いこなせるか不安もあった。今のところ「ホットクック」は味噌汁作りに毎日活用している。夜にキノコや野菜とだし、味噌を入れて予約しておけば、朝にはおいしい味噌汁ができている。具材のうまみがしみ出て味に深みがあるので、味噌も少量で済む。
すぐに食卓が整うので、気分もぐっと楽になった。火が通るのに時間がかかる根菜も軟らかくなり、1歳の子に食べさせても安心だ。「時産」でここまで心のゆとりが生まれるとは驚きだった。
(関優子)
[NIKKEIプラス1 2019年7月6日付]
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