Men's Fashion

Gapフラッグシップ銀座 刺しゅうサービスで特別感

Hot Zone

2019.7.16

米系ギャップジャパン(東京・渋谷)の旗艦店、「Gapフラッグシップ銀座」(東京・中央)が3月に導入した刺しゅうサービスが人気を集めている。客が購入したデニムやカーキパンツに、好きなアルファベット文字を縫い付けられる。既製品を“一点物”に変えられるほか、「ここでしか体験できない」特別感を演出し、リアルならではの店作りを目指す。




多くの人が行き交う銀座・数寄屋橋。道路に面したガラス張りの壁側に、2台のミシンがお目見えした。カラフルな糸などを配置し、工房風に仕上げた一角では、店員がデニムなどに刺しゅうを施す。以前とは異なる雰囲気に、通り掛かった人も目をこらして見入っていた。

■好きな文字を無料で刺しゅう

同店の刺しゅうサービス「カスタマイズステーション」は、客が店内でデニムなどのボトムスを購入すると、ピンクや緑、白といった糸の色だけでなく、アルファベットのフォントも店員と相談しながら選ぶ。その後、店員はデニムのポケット付近など、客が指定した部分に好きな文字を入れていく。

刺しゅうを入れる代金は無料で、商品はその場で受け取ることができる。国内約150店の中で最大規模で、来店客の多い同店で始めることで注目を集める戦略だ。店外から刺しゅうの様子を眺めることができるため、「そのまま来店する人もいる」(ギャップジャパン)という誘客効果も出ているようだ。

「若い世代の顧客とつながるには、今までの典型的なやり方ではいけない」。ギャップジャパンのスティーブン・セア社長は導入の狙いをこう話す。今年50周年を迎えるGAPでは、若い顧客層を開拓することが経営課題だ。ただ、ネット通販の拡充だけでは専従業者との違いは打ち出せず、店舗の陳腐化がさらに加速しかねない。

■リアルの顧客満足度を向上へ

そんななか、ギャップは27~35歳とその家族を「来店を拡大させる層」と定めた。店舗とインターネットの利便性を相互に向上させることで、こうした客層の拡大につなげることを狙う。セア社長は「若い世代は色々なチャネルで買い物をしており、シームレスにアプローチしていく必要がある」とし、リアルの顧客満足度も高めることを訴える。

同店ではデニムだけでなく、3月には巾着袋へ名前を入れる限定サービスも行った。幼児や子供向けの衣料品など6000円以上を購入した顧客は名前の刺しゅうを入れたデニム製の巾着をもらえる。ひらがなで名前を入れ、通学や通園時に使えるとして好評を得たという。

ギャップは今後の店作りについて「商品によっては、買ってもらった商品をよりカスタマイズしてパーソナライズできるようにする」(セア社長)という。2020年春にはGapストア新宿フラッグス店(東京・新宿)のリニューアル開業を控えており、銀座の旗艦店で培ったノウハウをこうした店にも取り入れていく方針だ。

(勝野杏美)

[日経MJ 2019年7月3日付]

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