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正岡徹氏と座右の書・愛読書

正岡徹氏と座右の書・愛読書

学生時代、いきなりドイツ語の原書を丸暗記させられた。

子供の頃は、もっぱら「少年講談」で里見八犬伝や霧隠才蔵などを読んだ。中学くらいにかけては夏目漱石や吉川英治。父親の持っていた『漱石全集』を片端から読み、『吾輩は猫である』『それから』などが印象深い。吉川英治では『三国志』『新書太閤記』『宮本武蔵』などで、特に『三国志』は曹操や諸葛孔明など人物に大変、興味を持った。

まさおか・とおる 1932年生まれ。医学博士。大阪府立成人病センター(現大阪国際がんセンター)病院長、骨髄移植推進財団(現日本骨髄バンク)理事長などを歴任。

まさおか・とおる 1932年生まれ。医学博士。大阪府立成人病センター(現大阪国際がんセンター)病院長、骨髄移植推進財団(現日本骨髄バンク)理事長などを歴任。

後年、白血病のシンポジウムで北京に呼ばれ、講演したことがあるが、声を掛けていただいた曹先生が曹操の子孫と聞いて驚いた。古い知り合いに再会したような気分で話がスムーズに運び、これを契機に「アジア太平洋骨髄移植学会」が発足し、地域間の協力体制も確立できた。ご縁に感謝するしかない。

大阪大学医学部に入学して最初の2年間は教養課程でドイツ語が必修科目。そのときのドイツ人の先生が、全くの初心者である我々学生に基本的なことを少しだけ教えてすぐ、『ファウスト』の原文を丸暗記するよう課題を出した。学生に選択の余地はなく、2年間はドイツ語ざんまい。幸い記憶力は良く、『タッソー』など、ゲーテを何冊か暗記した。『ファウスト』は神様と悪魔の賭けに始まる難解な戯曲だが、代表的なフレーズである「時間よ止まれ、お前は美しい」など、きれいな言葉がいくつもちりばめられているのが魅力で、何回も原書を読み返し、ドイツ語も上達した。

30代でドイツに留学し、ゲーテの文章を覚えていたことがドイツ人の先生とのコミュニケーションに大いに役立った。ゲーテとシラーが一緒に行ったレストランを訪ねるなど、ゆかりの地を巡ったのも思い出深い。医師としては白血病との闘いに明け暮れた。大人の急性白血病で初めて治ったのが私の担当した患者で、その後も放射線治療や骨髄移植、臍帯血(さいたいけつ)移植といった新しい治療法の開発に取り組んだ。

『免疫学に恋して』を著した山村雄一先生は阪大医学部の大先輩で、医学部長、総長を歴任され、大変お世話になった。『糖尿病物語』の垂井清一郎先生は大学時代の恩師。『低量放射線は怖くない』の中村仁信さんは、放射線治療の研究に一緒に取り組んだ仲間だ。ただ、最先端の研究をしていた時期、必要だったのは書店に並ぶ本より最新の論文。自分の発見が「どこにも書かれていない」ことを確認するため、血液学会など学会の論文には必ず目を通し、自分でも論文をたくさん書いた。

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