夏バテ防ぐミネラル補給 しっかり3食、バランス重視
夏を迎え、何かと汗をかく場面が増える。脱水症を防ぐため水分をしっかりとることに関心が向きがちだが、汗をかけばミネラルも失いやすい。体調維持に欠かせない栄養素だけに、上手に補給し夏バテを防ぎたい。
カルシウムやカリウムなどのミネラルは、たんぱく質や炭水化物、脂質、ビタミンと並ぶ5大栄養素の一つ。細胞や臓器の働き、神経の伝達など体の反応を円滑に進めるために欠かせない栄養素だ。例えば、ナトリウムが足りなくなると疲労感が増し食欲不振になる。ミネラルは体の中で作り出せないため食事を通して取る必要がある。
夏はこうしたミネラルを失いがち。「多量の発汗により水分と一緒にナトリウムやマグネシウムなどのミネラルが排出され不足しやすい」と満尾クリニック(東京・渋谷)の満尾正院長は指摘する。
また、ミネラルはストレスがかかると排出されやすくなる。暑い日中に屋外を歩くなどのストレスで、体に負担をかける物質も発生するが、それを抑えるために一部のミネラルが使われる。その他、ストレスがかかることで、腸管での吸収率が減少するミネラルもある。
暑さで食欲が低下するのもミネラル不足に陥る大きな要因だ。「あっさりした食事ばかりを選ぶと、エネルギーは足りてもその他の栄養素が取れず必要なミネラルが不足する」。栄養摂取に詳しいロイヤルクリスタルクリニック(東京・中央)の西牟田守院長はこう説明する。
それでは、ミネラルをどのように摂取すればいいのか。
ミネラルの働きは互いに影響もしているので、どれかが突出して不足しないように、まんべんなく取ることが重要になる。例えばカルシウムは骨を作るが、効果的に働くようにマグネシウムが補助している。カルシウムを十分にとっても、マグネシウムが不足していれば働きは低下する。
ミネラルの中でも、ナトリウムなどは熱中症予防のために必要ということがよく知られるようになってきた。普段から意識的に取ろうとする人も少なくない。
ミネラル補給を意識していても、見落とされがちなものもある。その代表例が、マグネシウムと亜鉛だ。「マグネシウムは重要なミネラルにもかかわらず、そもそも摂取量が足りていない人が多い」と西牟田院長は注意喚起する。
マグネシウムは緑色の葉物野菜や海藻に多く含まれ、体がエネルギーを作り出す働きをサポートし、不足すれば疲労感や血圧上昇を引き起こす。亜鉛は肉や魚などに多く、遺伝子の複製やたんぱく質の合成に欠かせない。不足すれば免疫力が低下して様々な体調不良につながる。夏バテの要因になりかねない。
いろいろなミネラルを過不足なく取り入れていくには、「まずは、しっかり1日3食、多種類の食材を用いた主菜と副菜がそろった食事をとること」と西牟田院長は助言する。その上で、水分補給の仕方に注意したい。
夏場は脱水症状を防ぐため、水分を多く取りがちになる。それによって、体内でのミネラル濃度が低くなってしまうことがある。高齢者の場合は特に注意が必要で「加齢で腎臓の機能が落ち、体内に水分やミネラルを留める力が低下する」と東邦大学医療センター大森病院(東京・大田)総合診療・急病センターの佐々木陽典助教は指摘する。
上手な水分摂取としては、具材から様々なミネラルが出ている味噌汁やスープを積極的に飲むことを心がけたい。一方、アルコールはある種のミネラルの排出を促すので飲み過ぎを避ける。効果的な栄養補給と水分摂取を心がけ、十分な睡眠をとってストレスを抑えて夏を乗り切ろう。
(ライター 武田京子)
[NIKKEIプラス1 2019年6月8日付]
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