雨にぬれた衣類のケア まず水拭き、汚れ落とす
洗濯家 中村祐一
今年も憂鬱になりがちな雨の季節が近づいてきた。長く降り続く雨や突然の大雨などで、衣類や靴などが影響を受けることも少なくない。今回は雨による衣類のトラブル対策を紹介したい。
雨でぬれた衣類を皆さんはどのように処置しているだろうか? 衣類がぬれると縮みやシワ、カビの原因になる。洗えるものは洗うのがベストだが、ドライクリーニング表示の衣類などすぐに洗えない場合は、固く絞ったタオルで軽く水拭きするのがおすすめだ。
意外かもしれないが、から拭きではなく水拭きを選ぶのがポイントだ。雨は少なからず汚れを含んでおり、ただの水ではない。酸性やアルカリ性に偏っている状態だと生地が傷む。ぬれたタオルで汚れを拭き取りつつ、酸性やアルカリ性を薄めるようにするのがねらいだ。
その後、形を整えてハンガーで干す。必ず肩幅にあった厚みのあるハンガーを使ってほしい。肩幅に合っていないハンガーだと、形崩れの原因になる。固く絞ったタオルで拭きあげ、形を整えて乾かしたら応急処置としてはOK。ただし、シルクやキュプラ、レーヨンなど水に弱い素材の衣類は専門店に相談するとよいだろう。
服だけでなく、足元の靴も雨の影響を受ける。あらかじめ雨とわかっていればそれなりの靴を履いて出かけるだろうが、突然の雨で靴がぬれて、革靴や革のサンダルなどに雨染みができたという経験を持つ人も少なくないはずだ。
薄い色の靴だと、ぬれたところとぬれていないところの境目がはっきりつくことが多い。境目をぼかすために、まずは固く絞ったタオルで水拭きをして、ぬれているところとぬれていないところの差をぼかすようにすると、雨染みが残りにくい。
拭いた後は乾かす。ぬれて拭いた後は革が乾燥しやすく、乾燥しすぎるとひび割れや縮みの原因になる。革用のクリームを塗って油分を補い、革の表面が過度に乾燥しないようにする。ニュートラルクリームなどの透明に近い色が万能でおすすめだ。
雨でぬれたときの応急処置に加えて、防水スプレーなどでできるだけぬれるのを防ぐことも大事だ。衣類用、革用など、素材に合った防水スプレーを選びたい。同じ防水スプレーと銘打っていても成分が微妙に異なるため、素材の特性に合ったものを使わないと逆にシミができることも考えられる。
衣類の場合は、スプレーして完全に乾いたら、アイロンやドライヤーなどで熱を与えるとはっ水効果がしっかりと出やすい。ズボンの裾など、泥はねなどで汚れやすい部分などに特におすすめしたい。スーツ類は上下全体にはっ水加工するのは家庭では大変な作業になるため、クリーニング店でのはっ水加工を賢く利用して手間を省くのもよいだろう。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2019年6月4日付]
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